コラム

中国メディアで私が「日本」を語り続ける理由

2017年11月30日(木)19時40分

有料ポッドキャストで自分の冠番組も始まった

単発の番組出演だけではない。ついに私の冠番組も始まった。その名も「李小牧深喉日本」。日本語訳するならば「李小牧の日本ディープスロート」といったところか。

ディープスロートとは、米国のウォーターゲート事件で内部情報を伝えた情報提供者だ。日本のディープ情報を伝えるという意味合いと、歌舞伎町出身の私ならではの「大人の言葉」との掛け言葉になっている。

この番組は中国の音声番組配信サイト「蜻蜓fm」で配信される有料ポッドキャストだ。無料コンテンツがあふれているこの時代にどれだけの人がお金を払ってくれるか不安だった、出だしは上々だ。11月24日時点で4回を配信したが、累計再生数は18万5000回を記録している。

中国では無料の人気ネット番組ならば1000万再生も珍しくはないが、有料となれば話は別だ。お金を払ってでも私の冠番組を見たいというファンがいる。しかもこれほどの数が。改めて感謝の気持ちでいっぱいだ。

もっとも、期待に答えるのは楽ではない。私は放送された番組を何度も聞き返し、どう改善すればもっと面白くなるのか四六時中考えている。ベッドの中でも脳みそがフル回転しているだけに、寝付けない日々が続いている。

エセでない「日中友好の架け橋」になりたい

なぜ私が中国の番組出演に積極的なのか、それには2つの理由がある。

第一に、お金のため。といっても、いい暮らしがしたいわけではない。新宿区議選では妻に頭を下げて選挙費用を貸してもらった。中国でのメディア出演などでお金は返せたが、今度は次の選挙に備えて貯金しなければならない。

選挙はとかくお金がかかる。例えば選挙カー。1週間借りる費用は約100万円だ。運転手とウグイス嬢の日当はそれぞれ約1万円である。前回は断念したが、高層ビルに住む知人から「え、李さんは選挙運動していたの? 気付かなかった」と言われてがっかりした。選挙カーからの挨拶ならば高層階まで届くそうだが、地べたを駆け回っていた私の声は届かなかったようだ。

もう1つの、そして最大の理由は「日中友好の架け橋」になるためだ。「日中友好の架け橋」――あまりにも手垢のついた俗な言葉だが、本当の意味で実現できている人は少ない。

「忠言耳に逆らう」。本当の提言は耳に痛いもの。嫌われる覚悟で日中双方に言うべきこと言うのが本当の「架け橋」だろう。日中双方におべっかをつかう、エセ「架け橋」がなんと多いことか。

私はこの30年間、歌舞伎町の「黒白両道」(表の世界と闇の世界)の狭間を生きてきた。歌舞伎町の夜といういかがわしい世界に住んでいるが、しかし闇の世界に落ちたことはない。常に境界ぎりぎりで踏みとどまってきた。

その私だからこそ「日中両道」の狭間に立って、本当の意味での「日中友好」を実現できるのではないかと思っている。決してたやすく実現できるような課題ではないが、残る私の人生の全てをこの仕事に捧げようと決めている。

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プロフィール

李小牧(り・こまき)

新宿案内人
1960年、中国湖南省長沙市生まれ。バレエダンサー、文芸紙記者、貿易会社員などを経て、88年に私費留学生として来日。東京モード学園に通うかたわら新宿・歌舞伎町に魅せられ、「歌舞伎町案内人」として活動を始める。2002年、その体験をつづった『歌舞伎町案内人』(角川書店)がベストセラーとなり、以後、日中両国で著作活動を行う。2007年、故郷の味・湖南料理を提供するレストラン《湖南菜館》を歌舞伎町にオープン。2014年6月に日本への帰化を申請し、翌2015年2月、日本国籍を取得。同年4月の新宿区議会議員選挙に初出馬し、落選した。『歌舞伎町案内人365日』(朝日新聞出版)、『歌舞伎町案内人の恋』(河出書房新社)、『微博の衝撃』(共著、CCCメディアハウス)など著書多数。政界挑戦の経緯は、『元・中国人、日本で政治家をめざす』(CCCメディアハウス)にまとめた。

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