コラム

通学路の交通事故がなくならないのはなぜか?

2022年03月18日(金)17時40分
通学路

点検を実施するのは事故が起きたときだけ?(写真はイメージです) Studio Yoshino-iStock

<子供を巻き込む重大事故が発生するたびに安全点検が行われているが、通学路での事故は依然としてなくならない。新学期を前に、事故防止対策について今一度考えたい>

昨年6月28日の午後3時ごろ、千葉県八街市で飲酒運転の大型トラックが、市道の通学路を一列で歩いていた朝陽小学校の児童5人をはねて2人が死亡、3人に大けがを負わせた。今月2日の論告求刑公判で検察側は梅沢洋被告に対し、懲役15年を求刑した。判決は25日に出る。

事業用自動車のドライバーの問題であると同時に、通学路の安全性について再考を迫るきっかけとなる事故だった。来月から新年度が始まる。通学路の事故を防ぐためにどうすればいいのか、今一度考えたい。

国の要請で一斉に行われた合同点検

八街市の事故を受け、文部科学省は各都道府県・指定都市教育委員会や私立学校に合同点検を要請。全国の教育委員会が中心となり、市町村・学校・警察・道路管理者などが一斉に点検を実施した。

長野県では、まず学校が危険箇所をリストアップし、現地点検の必要な箇所を抽出。その後、昨年9月ごろに学校・PTA・道路管理者と地元警察が合同点検を行い、対策案を検討している。

重点的に点検したのは次のような場所だ。

・見通しのいい道路や幹線道路の抜け道などクルマの速度が上がりやすい箇所
・大型車両の通行が多い箇所
・事故に至らなくてもヒヤリハット事例があった箇所
・保護者、見守り活動者、地域住民から市町村へ改善要望があった箇所

長野県の道路管理において対策が必要とされたのは546箇所。今年2月時点で514箇所の対応が完了し、残りは2022年度内に完了予定だ。

通学路の安全対策の必要性から、国土交通省も2021年度の補正予算や22年度予算案に関連費用を特別に計上した。

過去の点検事例

通学路の交通事故や事件を受けて、過去にも全国一斉で合同点検が行われている。2012年4月、京都府亀岡市で児童の列に自動車が突入する事故が起こるなど、登下校中の事故が相次いで発生。これを受けて文部科学省・国土交通省・警察庁は翌5月から通学路の緊急合同点検を行い、11月に対策一覧表を作成。その後、各地で通学路交通安全プログラムが策定された。

主な対策として以下の措置が挙げられる。

・歩道の設置、路肩の拡幅
・児童が歩くことを知らせるためのグリーンベルトなどのカラー舗装
・防護柵の設置
・自転車と歩行者がぶつからないよう区分するための自転車通行空間の整備
・安全確保のための踏切の拡幅
・車とすれ違う際に危険とならないよう電柱を撤去 など

プロフィール

楠田悦子

モビリティジャーナリスト。自動車新聞社モビリティビジネス専門誌『LIGARE』初代編集長を経て、2013年に独立。国土交通省の「自転車の活用推進に向けた有識者会議」、「交通政策審議会交通体系分科会第15回地域公共交通部会」、「MaaS関連データ検討会」、SIP第2期自動運転(システムとサービスの拡張)ピアレビュー委員会などの委員を歴任。心豊かな暮らしと社会のための、移動手段・サービスの高度化・多様化とその環境について考える活動を行っている。共著『最新 図解で早わかり MaaSがまるごとわかる本』(ソーテック社)、編著『「移動貧困社会」からの脱却 −免許返納問題で生まれる新たなモビリティ・マーケット』(時事通信社)、単著に『60分でわかる! MaaS モビリティ革命』(技術評論社)

今、あなたにオススメ

キーワード

ニュース速報

ワールド

ノルウェー中銀、金利4.0%に据え置き 今後の利上

ワールド

ロシア議員団が訪米、ウクライナ巡る関係悪化後初

ビジネス

中国、大口投資家の銀行株保有規制の緩和検討=関係筋

ビジネス

三菱ケミ、紙おむつ向け原料値上げ 中東情勢長引き日
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終回に世界中から批判殺到【ネタバレ注意】
  • 2
    意外と「プリンス枠」が空いていて...山崎育三郎が「日本産ミュージカルの夢」に賭ける理由【独占インタビュー】
  • 3
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」モナコ舞踏会に見る富と慈善
  • 4
    「有事の金」が下がる逆説 イラン戦争で市場に何が…
  • 5
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 6
    デンマーク王妃「帰郷」に沸騰...豪州訪問で浮かび上…
  • 7
    まずサイバー軍が防空網をたたく
  • 8
    地上侵攻もありえる...イラン戦争が今後たどり得る「…
  • 9
    【クイズ】2年連続で「世界幸福度ランキング」で最下…
  • 10
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」…
  • 1
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え時の装いが話題――「ファッション外交」に注目
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公開...母としての素顔に反響
  • 3
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ海峡封鎖と資源価格高騰が業績を押し上げ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラ…
  • 6
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 7
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 8
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店…
  • 9
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」…
  • 10
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story