コラム

「何のための実証実験か」事故を乗り越え、自動運動で日本が世界をリードするには

2022年03月02日(水)19時25分

自動運転サービスの展開には車両開発だけではなく、道路・交通ルール・モビリティサービスを変えていく必要があり、一社ではできない。民間企業、関係省庁、大学などが連携してオールジャパンで取り組む必要がある。

kusuda220302_autocar2.jpg

EasyRide 日産自動車とNTTドコモの実証実験(筆者撮影)

これまでの自動運転の取り組みとして、内閣府が横串を刺して府省・産官学連携でイノベーションを起こす戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)自動運転がある。第1期と第2期を通して進められ、来年度はその最終年度にあたる。今後は「RoaD to the L4(自動運転レベル等先進モビリティサービス研究開発・社会実装プロジェクト)」へとつなげていくようだ。

掲げられている主な目標は、2025年度までにレベル4の無人自動運転サービスを40カ所以上で実現することだ。

2021年、筆者はSIPに関与して国土交通省や経済産業省などの全国の自動運転サービス事業を北から南まで試乗して回った。秋田県の上小阿仁村では約2年にわたり自動運転車両を運行させているなどサービスを開始しているところもあった。

実際にサービスがスタートしているところは2021年末の時点では全国で数カ所だが、自動運転バスやタクシータイプの自動運転は、クルマが運転できない高齢者が増える中で重要な技術だ。

世界をリードする気概を

日本の自動運転サービスの実証実験の現場は失敗に不寛容だと揶揄されるように、絶対に失敗してはいけない、失敗するとメディアや世間から叩かれてしまう──という雰囲気になっている。

人の命を預かる乗り物であるため、安全は何よりも優先されないといけない。しかし、ずっと会社の敷地内をぐるぐる回る走行テストをしていては、いつまでたっても実用化されることはない。

自動運転サービス実現に長年尽力してきた国際自動車ジャーナリストの清水和夫氏は、今日の実証実験の実態に首をかしげる。

「税金を使う実証実験は何のためにあるのだろうか。実証実験では、失敗してはいけないと社会もメーカーも思っている。どれだけ安全対策を講じても事故は必ず起きる。実証実験で事故が起きたときに思い切って状況や原因をオープンにし、そこから何を学んだかが大切だ」

「何かあった時にどう改善していくか」を考え、実現していくのはかねてより日本のお家芸だ。国民も含めて知恵を出し合い、今の苦難を乗り越えて、この領域で世界をリードしていってほしい。

ニューズウィーク日本版 高市vs中国
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年1月27号(1月20日発売)は「高市vs中国」特集。台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


プロフィール

楠田悦子

モビリティジャーナリスト。自動車新聞社モビリティビジネス専門誌『LIGARE』初代編集長を経て、2013年に独立。国土交通省の「自転車の活用推進に向けた有識者会議」、「交通政策審議会交通体系分科会第15回地域公共交通部会」、「MaaS関連データ検討会」、SIP第2期自動運転(システムとサービスの拡張)ピアレビュー委員会などの委員を歴任。心豊かな暮らしと社会のための、移動手段・サービスの高度化・多様化とその環境について考える活動を行っている。共著『最新 図解で早わかり MaaSがまるごとわかる本』(ソーテック社)、編著『「移動貧困社会」からの脱却 −免許返納問題で生まれる新たなモビリティ・マーケット』(時事通信社)、単著に『60分でわかる! MaaS モビリティ革命』(技術評論社)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

片山財務相、為替市場「緊張感持って注視」 米当局と

ワールド

勝敗ライン、自民で過半数とは言ってない=高市首相

ワールド

米の広範囲に大寒波、一時100万戸が停電 1万10

ワールド

韓国の李ヘチャン元首相が死去 訪問先のベトナムで心
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:「外国人問題」徹底研究
特集:「外国人問題」徹底研究
2026年1月27日号(1/20発売)

日本の「外国人問題」は事実か錯誤か? 7つの争点を国際比較で大激論

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 2
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰に地政学リスク、その圧倒的な強みとは?
  • 3
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 4
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 5
    「外国人価格」で日本社会が失うもの──インバウンド…
  • 6
    「楽園のようだった」移住生活が一転...購入価格より…
  • 7
    麻薬中毒が「アメリカ文化」...グリーンランド人が投…
  • 8
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 9
    私たちの体は「食べたもの」でできている...誰もが必…
  • 10
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 1
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 2
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 3
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味を帯びる「超高齢化」による「中国社会崩壊」
  • 4
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な…
  • 5
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 6
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 7
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 8
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 9
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の…
  • 10
    麻薬中毒が「アメリカ文化」...グリーンランド人が投…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 5
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 6
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 7
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
  • 10
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story