- HOME
- コラム
- あなたの人生 聞かせてください
- 30歳、福島出身──第三者が広島で被爆体験を語る意…
30歳、福島出身──第三者が広島で被爆体験を語る意義
大河原さんは震災に向き合うことを避けるようになった。しかし、被爆体験伝承者の研修を受けていた際、広島の高校生に震災について話してほしいと依頼される。人前で伝える経験になればと、両親のことを第三者的に話した。すると、学生たちの反応は予想外だった。
「両親に共感してくれたようでした。本人から直接でなく、第三者が当事者の想いを話すことで、より伝わることもあると、発見でした」
2020年8月6日は広島、9日は長崎に、原爆が投下されて75年を迎える。広島で育った私は「遭(お)うたものにしか分からん」と被爆者が口にするのをたびたび耳にしてきた。
確かに当事者にしか本当のところは分からない。一方で被爆者の平均年齢は83歳を超え、その経験をどう伝承していくかは喫緊の課題だ。
大河原さんが目指すのは、被爆者に寄り添って、想いを受け取り、伝えるときは聴衆と同じ立場で第三者として語る伝承だ。当事者でないから伝えられることがある。実体験からそう語る大河原さんの活動には、次世代の伝承の大きなヒントがある。
<2020年8月11日号/18日号掲載>
【話題の記事】
・冷静と情熱と兄弟と音楽革命(「King Gnu」リーダー常田大希さんの兄、常田俊太郎さん)
・沖縄戦から75年、なぜ人は戦争の記憶を語るのか(戦争体験を記録し続けるてい子与那覇トゥーシーさん)
2020年8月11日/18日号(8月4日発売)は「人生を変えた55冊」特集。「自粛」の夏休みは読書のチャンス。SFから古典、ビジネス書まで、11人が価値観を揺さぶられた5冊を紹介する。加藤シゲアキ/劉慈欣/ROLAND/エディー・ジョーンズ/壇蜜/ウスビ・サコ/中満泉ほか
この筆者のコラム
「嵐が好き」の先にある、言葉が織り成す人生の物語 2020.10.21
30歳、福島出身──第三者が広島で被爆体験を語る意義 2020.08.06
冷静と情熱と兄弟と音楽革命 2020.07.25
沖縄戦から75年、なぜ人は戦争の記憶を語るのか(久保田智子) 2020.06.23
TBS「天気予報の森田さん」の気象哲学──不確実のススメ 2020.06.04
ステイホームの今こそ、家族と「#うちで話そう」──久保田智子とお母さんの対話 2020.05.27
元No.1ホストに聞いた、歌舞伎町という「居場所」と社会とのつながり 2019.12.19