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政権直撃のパー券裏金問題と検察「復権」への思惑
今回の事件はリクルート事件に匹敵?
第3に、「現下の経済状況と政治不信」がある。物価高の中での増税打ち出しで国民の生活は脅かされ、減税給付策は弥縫策と見透かされている。「大臣賃上げ法」(特別職職員給与法改正法)、インボイス制度の性急な導入、法務・財務副大臣や文科政務官の不祥事辞任などに、多くの国民が呆れたり、怒りを感じたりしている。円安で海外旅行や留学をあきらめた人もいるかもしれない。その最中で浮上した「パーティー」や「キックバック」という言葉が持つ「負の語感」のインパクトはことさらに強いものがあり、国民の政治不信は深刻なレベルに達している。
その点で、今回の事件は「リクルート事件に匹敵」するという声もある。リクルート事件は1988年に発覚した戦後最大級の贈収賄事件で、リクルート社から値上がり確実な関連会社リクルートコスモスの「未公開株」を譲り受けていた多くの政治家や官僚が公開後に株を売却し「濡れ手に粟」の利益を得ていた疑獄事件だ。東京地検特捜部による捜査で藤波孝生元官房長官らが受託収賄罪等で起訴され、当時の竹下登内閣は総辞職に追い込まれた。後継首相だった宇野宗佑の「女性問題」や89年春の消費税導入に対する国民的批判もあり、自民党は89年夏の参議院選挙で33議席を減らし過半数割れの惨敗を喫している。
今回の裏金問題は、そうした「賄賂バラマキ型の贈収賄」とは直接には関係がない。しかし、「ムラ(共同体)の仲間内でうまくやる」という腐敗した慣行が横行し、国民の深刻な政治不信を招いている点ではリクルート事件と同じ類だとも言える。
派閥は自民党を構成する基本的単位(ムラ)である。その派閥における腐敗を是正するのは党総裁の職責であろう。岸田首相(自民党総裁)は、各派閥のパーティーを自粛するように呼びかけるとともに、宏池会会長を退き派閥から離脱する意向を表明した。
しかし岸田首相は2021年10月4日の首相就任以来、昨年までの間に少なくとも12回の政治資金パーティーを開催し2億3714万8625円の収入を得ている(うち売上が1000万円を超える「特定パーティー」は9回で2億2727万9505円)。抜群の集金力とも言えるが、2001年に閣議決定された「国民の疑惑を招きかねないような大規模な政治資金パーティーを自粛する」という大臣規範はどこ吹く風だったとも言える。「1回について平均2500万円を超える売上のパーティーは大規模ではない」とするのであれば、その金銭感覚にこそ庶民の厳しい視線が向けられるだろう。
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