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「嫌韓」保守政治と「反日」旧統一教会の併存を生んだ日本政治の弛緩
しかし政教分離の在り方は多様だ。例えばデンマークは国民の4分の3以上が信徒である福音ルーテル教会を国教とし、国の支援義務を憲法で規定している。他方で2018年には、公共空間における宗教的着衣の装用が禁止された。
ブルカやニカブを着用する女性イスラム教徒を狙い撃ちした信教の自由の侵害だとする反対論は少数で、与野党多数が賛成したのは、公共空間で顔を隠すことはデンマーク社会の価値観と共同体意識にそぐわないとされたからだ。
共和国理念に基づく「ライシテ」という厳格な政教分離原則を有するフランスから生まれた事実上のイスラム規制は、ほかにもオランダ、ベルギーなど欧州諸国に波及している。世俗国家において、信教の自由に対する「配慮」と国家の理念および共同体意識からなる「要請」との間でいかにして「政教関係の調和」を図るか、その内実は各国の歴史と社会通念によって異なる。
戦後日本における政教分離は、連合国軍総司令部(GHQ)による1945年の神道指令に端を発する国家神道と政治の切断を主眼としてきた。それは天皇制の脱政治化を含意し、天皇との距離感こそが歴代自民党政権が細心の注意を払って維持してきた日本版政教分離の神髄でもある。
他方で、1999年以来20年弱にわたって自民党と連立政権を組む公明党は創価学会と密接な関係があり、政教分離の観点から批判も存在する。
しかし政教分離は、信教の自由を一層確実なものにする客観的法規範であり、特定宗教による政治権力掌握がもたらす弊害と国家の介入による宗教の堕落を共に防ぐ知恵でもある。従って謙抑的な政教関係が維持される限り、国家が宗教と一切関わっていけないわけでも、宗教団体による政治活動が禁止されるわけでもない。
公明党がバランサーの役割を果たすが故に外交・安全保障や福祉政策で現実的穏健性が担保されるとして、自公連立を戦後政治史の中で特筆される戦略的パートナーシップであると評価する声もある。宗教的思惟に支えられた人権と寛容の精神を政治過程に反映させることは、むしろ民主政の健全な土台を形成する。
わが国の司法は、靖国神社の公式参拝や玉串料公金支出などをめぐり、政教分離原則に抵触する国の宗教的行為をもっぱら「目的が宗教的意義を持ち、その効果が宗教に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉になるか」を「一般人から評価できるか」という基準で審査してきた。
自民党議員による旧統一教会との関わり合いは、国による行為と同視できるわけではなく、目的が宗教的意義を持っていると言えないことが大半であり、政教分離違反とは言い難い。
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