コラム

「ロシア軍は雪に強いシベリアの部隊を配置した。クリミアの時と同じだ」──ウクライナ兵を訓練した元米兵に聞く

2022年01月31日(月)10時43分
ウクライナ軍事訓練

ウクライナの首都キエフでの市街戦を想定し、おもちゃの銃で軍事訓練を受ける市民 Gleb Garanich-REUTERS

[ロンドン発]ジョー・バイデン米大統領は1月27日、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領と電話会談し「ロシアが2月にウクライナに侵攻する可能性は明確にある」と改めて語った。米軍制服組トップのマーク・ミリー統合参謀本部議長も翌28日の記者会見でこんな見方を示した。

「これまでのロシアの軍事演習とは違う。これだけの規模の展開は冷戦時代にまでさかのぼる。彼らは毎年演習を行っており、われわれは注意深く観察しているが、今回はそれとは異なる」。ロシア軍は約13万人の地上軍、空軍、海軍、特殊部隊、サイバー、電子戦、指揮統制、ロジスティクス、エンジニアをウクライナ国境沿いに集結させる。

米紙ニューヨーク・タイムズは「ロシア軍はウクライナ全体に侵攻する態勢を整えたと米国防総省が評価した」と報じた。英軍はすでにエストニアに900人以上、ポーランドに軽騎兵中隊約150人、ウクライナに対戦車ミサイルの訓練のため100人以上を駐留させ、英空母HMSプリンス・オブ・ウェールズが北大西洋条約機構(NATO)海上即応部隊を率いて北極圏で待機する。

ボリス・ジョンソン英首相は 「もしウラジーミル・プーチン露大統領が流血と破壊の道を選ぶなら、それは欧州にとって悲劇となる」とプーチン氏との電話会談に臨む。ロシアがクリミアを併合、ウクライナ東部で紛争が始まった2014年から4年近く、現地でウクライナ軍を指導した元米陸軍兵士で米民間警備会社経営のマーク・ロペス氏に聞いた。

――ウクライナ軍を支援するために14年から4年近く何をしましたか

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ウクライナで志願兵を訓練するロペス氏(右端、2015年3月撮影、同氏提供)


ロペス氏:主に最前線での評価だ。14年当時、衛生上の問題やロジスティックの問題があった。私の仕事は爆発物探知、戦闘時の外傷に対する応急処置を教えることだった。戦争が差し迫っている場合、アメリカはウクライナ西部に軍の医療部隊を派遣する可能性がある。

西部のリヴィウには「平和訓練センター」と呼ばれる巨大な訓練センターがある。イタリアに駐留する米軍の部隊が過去5年間、この平和訓練センターでウクライナ軍の訓練をしてきた。リヴィウはカルパティア山脈のそばにある。一方、カナダ軍やイギリス軍は南部の港湾都市オデッサに赴いた。

1月26日夜もウクライナ軍戦闘グループの友人たちから電話があり「これは何だ? 何が必要だ? これを注文する必要があるのか」と尋ねてきた。彼らは戦術的には良い状況だと心配していなかったが、ロシア軍がミサイルや爆弾を落とし始めたら厳しくなる。

(筆者注)英軍は今回、2千の対戦車兵器と精鋭部隊をウクライナに送り、カナダ軍は防弾ベストや暗視ゴーグルなどの防衛装備を供与し400人の部隊を展開している。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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