新型コロナウイルスの感染拡大がもたらす世代間の対立と宗教間の対立激化
1日の新規感染者数が7000人を超え、臨時のPCR検査センターに並ぶ韓国人(12月8日、ソウル) Heo Ran- REUTERS
<恵まれない若者世代と豊かな高齢世代がそれぞれ新型コロナウイルス感染の発生源となったことや、文政権打倒を叫び防疫対策も守らない宗教右派の存在が、韓国国内の感染拡大と対立激化を煽っている>
韓国では新型コロナウイルスの感染拡大と共に世代間と宗教間の対立が深刻化している。12月7日の1日あたりの新規感染者数は7,174人で過去最高を記録した。その後も感染は収まらず12月9日まで三日連続で新規感染者数が7,000人を超えた。
韓国における1日当たりの新規感染者数と累積感染者数の推移
出所)韓国疾病管理本部ホームページから筆者作成
韓国政府は新型コロナウイルスのさらなる拡大を防ぐため、今後(1)ファイザー製やモデルナ製のワクチンを中心に日本より早く11月から始まった3回目の接種率(12月10日現在11.8%)を増やすことと、(2)新型コロナウイルスの感染拡大を防止するために、飲食店の営業時間の制限など規制を強化する方針である。
従前の世代間対立を増幅
新型コロナウイルスの感染が拡大する中で世代間の対立に続き、宗教間の対立も広がろうとしている。韓国社会における世代区分は、大きく(1)ベビーブーム世代(1955年~1963年生まれ)、(2)386世代(1960年代生まれ)、(3)X世代(1970年代生まれ)、(4)Y世代(1980年~1995年生まれ、ミレニアル世代ともいう)、(5)Z世代(1996年~2012年生まれ)に区分することができる。その中で世代間の対立は主に386世代とそれ以降に生まれた世代、そして若者世代や高齢者世代を中心に発生している。
386世代とは、1990年代に年齢が30代で、1980年代に大学生活を送り民主化運動にかかわった1960年代に生まれた者を指しており、(30代、80年代、60年代の3,8,6を取って386世代と称する)現在はほぼ50代になったことで、最近では586世代とも呼ばれている。
韓国社会の中心とも言える386世代は、政治や経済に与える影響力においてX世代やY世代を大きく上回っている。1960年代生まれの386世代は、1970年末〜1980年代に大学に入学した。当時の高校卒業生の大学進学率は3割を少し上回っていたので、約7割が大学に進学する今とは大学生の存在感が大きく異なる。
386世代は学業より学生運動や民主化運動に重きを置いたにもかかわらず、大きな問題なく労働市場に加わることができた。だが、1997年に起きたアジア通貨危機により状況は急変した。ウォンが暴落し、金利が上昇すると企業倒産が相次き、街には失業者が溢れた。アジア通貨危機の影響はX世代やその後のY世代、そして最近のZ世代まで及んでいる。卒業すれば正規職が当たり前だった386世代とは異なり、X世代やY世代、そしてZ世代の多くは非正規職として労働市場に参加した。その結果、386世代との間で所得格差が発生し対立が広がった。
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