コラム

リカレント教育が身を助ける

2020年11月02日(月)14時50分

株式会社ワークポートが2020年2月に実施した調査結果によると、学び直しやスキルアップのための支援や取り組みを行っている企業に魅力を感じると回答した回答者の割合は93.5%に達しました。労働力不足が深刻化する中で、企業がより多様な学び直しの機会を提供すると、良い人材を獲得できる可能性も高くなるでしょう。従って、今後はより多くの人が参加できるようにe-ラーニングを含め、より多様な方法でリカレント教育が実施される環境を整える必要があると考えられます。

Q4.リカレント教育が地域社会や商店街の活性化にも貢献できますか?

実は、筆者も本文で取り上げた「京都リカレントステイ」に参加していました。筆者は今年でちょうど50歳になり、まだ定年までには時間的な余裕があるかもしれません。但し、労働市場や雇用対策などを研究する者として、現場で体験することは重要だと思い、躊躇することなく参加を申し込みました。筆者は、古川町商店街、綿善旅館、京都移住計画という選択肢の中から、古川町商店街を選択しました。筆者は子ども時代に住んでいた町には商店街がなく、1週間に1回お母さんと手を繋いで商店街に買い物に行くのが最高の楽しみでした。つまり、商店街が大好きだったことが体験先として古川町商店街を選んだ主な理由です。筆者は古川町のある食料品店で商品の販売・陣列、そしてレジなどを体験させてもらいました。また、京都市の中央卸売市場に同行し、商品の仕入れなどを見学しました。このような実践の中から筆者にとって最も難しかったのは接客と東京とは異なる言葉遣いでした。特に、「おおきに」という言葉が口からなかなか出ませんでした。今振り返ると恥ずかしいことも多かったものの、筆者にとっては定年後のことを考えられる貴重な時間だったと考えます。

筆者が参加した古川町商店街は、かつては"東の錦"もしくは"京の東の台所"と呼ばれていた京都を代表する商店街でした。しかしながら、後継者不足による閉店、店主の高齢化、店舗の住宅・マンション化、地域社会との連携不足などにより、店舗数や来場数が年々減るという問題が発生しました。そこで、古川町商店街は、フードコート祭りやランラン祭りなどの広域型イベントを開催し、商店街の活性化を目指し、このような緻密な努力の結果、2015年には31店舗まで減少していた店舗数は2018年には41店舗まで増加し、1日の来場者数も同期間に1,400人から3,100人まで増加しました。商店街を活性化させるために古川町商店街の皆様が大変な努力をしたのかがうかがえます。

今回、「京都リカレントステイ」を通じて、筆者を含めた多くの方が古川町商店街のことを知り、そして愛着を感じるようになったのではないかと考えられます。今後、リカレント教育が個人の知識や経験を豊かにするだけでなく、地域社会や商店街の活性化にも貢献できるシステムとして整備されることを心から願うところです。

*この記事は、ニッセイ基礎研究所のジェロントロジーを学ぼう!「リカレント教育は重要ですか?」2020年11月2日を加筆・修正したものである

プロフィール

金 明中

1970年韓国仁川生まれ。慶應義塾大学大学院経済学研究科前期・後期博士課程修了(博士、商学)。独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年からニッセイ基礎研究所。日本女子大学現代女性キャリア研究所特任研究員、亜細亜大学特任准教授を兼任。専門分野は労働経済学、社会保障論、日・韓社会政策比較分析。近著に『韓国における社会政策のあり方』(旬報社)がある

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国こそが「真の脅威」、台湾が中国外相のミュンヘン

ワールド

米中「デカップリング論」に警鐘、中国外相がミュンヘ

ビジネス

ウォルマート決算や経済指標に注目、「AIの負の影響

ワールド

ドバイ港湾DPワールドのトップ辞任、「エプスタイン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発される中国のスパイ、今度はギリシャで御用
  • 2
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」でソフトウェア株総崩れの中、投資マネーの新潮流は?
  • 3
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活動する動画に世界中のネット民から賞賛の声
  • 4
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 5
    それで街を歩いて大丈夫? 米モデル、「目のやり場に…
  • 6
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 7
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 8
    川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に─…
  • 9
    【インタビュー】「4回転の神」イリヤ・マリニンが語…
  • 10
    世界市場3.8兆円、日本アニメは転換点へ――成長を支え…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 5
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
  • 6
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 7
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 8
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 9
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」で…
  • 10
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story