コラム

リカレント教育が身を助ける

2020年11月02日(月)14時50分

これからは、何度も学び直していい monkeybusinessimages-iStock.

<人生100年時代、社会人が何度も学び直しながら新たな仕事に挑戦できる教育制度が必要だ>

Q1.「人生100年時代」は実現可能ですか?

最近、マスコミから「人生100年時代」という言葉をよく耳にします。人生100年時代という言葉は、2016年に出版され、日本でも30万部を超えるベストセラーになった『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)-100年時代の人生戦略』、東洋経済新報社、以下『LIFE SHIFT(ライフ・シフト) 』)から由来しています。本書で引用している人口学者の研究結果では、2007年生まれのアメリカ、イタリア、フランス、カナダの子供の50%は104歳まで、日本の子供は107歳まで生きると見通しています。

日本人の平均寿命は、1950年に男性58.0歳、女性61.5歳から2018年には男性81.25歳、女性87.32歳まで伸びています。さらに、厚生労働者が発表した「平成30年簡易生命表の概況」によると、2018年における65歳時点の平均余命は、男性が19.55年、女性が24.38歳まで上昇しました。つまり、健康であれば平均的に男性は85歳頃まで、そして、女性は92歳頃まで生きることができる時代になりました。このまま続くと100歳まで生きることが当たり前の時代が近いうちに実現されるかもしれません。

毎年9月15日の「老人の日」の後に発表されている日本の100歳以上の高齢者の数は、2019年に7万1238人で2018年より1489人も増え、初めて7万人を超えることになりました。100歳以上の高齢者の数は、1997年以降からは年間1000人以上増加しはじめ、特に、2007年から2016年までは10年連続で年間3000人以上も増加しました。100歳以上の高齢者に占める女性の割合は、1963年の86.9%から1984年には77.8%まで下がった後、再び上昇し2019年には88.1%に至っています。

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Q2.リカレント教育とは?

長寿化は人生設計の見直しを要求します。『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』によると、これまで多くの人々は「教育→仕事→引退」という3ステージの生き方で生活してきました。しかし、寿命が延び、健康に生活する時間が長くなれば、働く期間も長くなり、転職する人も、また日本の多くの企業が設定している60歳定年以降に働くことを希望する人も多くなると考えられます。特に、転職後に、または定年後に既存の仕事とは変わった仕事を希望する人が増加すると予想され、そこでリカレント教育の重要性が高まってきています。

リカレント教育(recurrent education)とは、義務教育や基礎教育を終えて労働に従事するようになってからも、個人が必要とすれば教育機関に戻って学ぶことができる教育システムです。文部科学省では、リカレント教育を「『学校教育』を、人々の生涯にわたって、分散させようとする理念であり、その本来の意味は、『職業上必要な知識・技術」を修得するために、フルタイムの就学と、フルタイムの就職を繰り返すことである』と定義しています。

プロフィール

金 明中

1970年韓国仁川生まれ。慶應義塾大学大学院経済学研究科前期・後期博士課程修了(博士、商学)。独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年からニッセイ基礎研究所。日本女子大学現代女性キャリア研究所特任研究員、亜細亜大学特任准教授を兼任。専門分野は労働経済学、社会保障論、日・韓社会政策比較分析。近著に『韓国における社会政策のあり方』(旬報社)がある

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