リカレント教育が身を助ける
日本における今までのリカレント教育は、主に「社会人学習」として実施されてきました。会社に通う社会人が大学の学部(通信制)、大学院、専修学校で学びたいことを学習するケースが多いものの、諸外国に比べると、日本のリカレント教育への参加者は低い水準に止まっています。例えば、2015年時点の「25歳以上の『学士』課程への入学者の割合」と「30歳以上の『修士』課程への入学者の割合」は、それぞれ2.5%と12.9%で、OECD平均16.6%と26.3%を大きく下回っています。さらに、日本では学ぶことへの意欲が年齢とともに弱まる傾向にある現状を考慮すると、中高年齢層に対するリカレント教育は十分に普及できていない可能性が高い状況です。
文部科学省が2018年に発表した「教育・生涯学習に関する世論調査」によると、「あなたは、学校を出て一度社会人となった後に、大学、大学院、短大、専門学校などの学校において学んだことがありますか」という質問に対して、「学習したことがある」と「学習してみたい」と回答した年齢代別割合の合計は、50代は40.2%、60代は34.5%、70歳は22.1%で、30代の51.9%と40代の46.0%を下回る結果が出ました。
Q3.実際、リカレント教育はどのように実施されていますか?
日本社会が以上のような問題点を抱えている中で、一般社団法人定年後研究所では、中高年会社員に対して「リカレント(学び直し)」だけでなく、「フィールドワーク」を通じて、自分自身の定年後の「自走人生」探しに取り組むことを目的に、昨年12月から今年の2月に渡り、全国初の複合型リカレントプログラム「京都リカレントステイ」を企画・実施しました。このプログラムでは、現役の会社員も参加しやすいように週末や休日を中心に日程が編成され、佛教大学等での「座学」、古川町商店街、綿善旅館、京都移住計画での「フィールドワーク」 、そして参加者全員による「意見交換や発表会」などが行われました。プログラムが終わった後、参加者は、「勤務先の研修では得られない貴重な経験をした」、「他分野に従事している人とお話をすることにより勉強になった」、「地域の商店街を活性化させるための対策を考えるようになった」、「以前より、京都のことが分かり、親しみを感じるようになった」、「京都に移住することをまじめに考えることになった」と、リカレント教育に対する満足度を表しました。
政府は、少子高齢化の進展に伴う、公的年金基金の枯渇と労働力不足の問題を解決するために、定年延長を含めて高齢者が継続して働く環境を構築しようとしています。また、働き方改革を推進し副業・兼業の普及促進も図っています。政府の目標通り、人々がより長く働き、より多様な分野で働くためには、企業もOJTなどの教育訓練以外に、より多様な学び直しが経験できる機会を提供する必要があります。
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