コラム

リーマンショック以降で最大の転換点を迎えた中国経済 2つの選択肢から見えるシナリオとは?

2018年10月30日(火)15時40分

これまで中国の労働者は、巨額の設備投資という需要に応える形で、主に製造業や建設業から賃金をもらい、これが消費の源泉となっていた。だが内需型経済に切り替える場合には、賃金の源泉を、製造業ではなくサービス業を含む国内産業にシフトさせる必要がある。

こうしたシフトを発生させるためには、可処分所得を増やし、個人の支出を拡大しなければならない。このところ中国政府は相次いで大規模な減税策を打ち出しているが、一連の施策は消費拡大による所得の向上を狙ったものである。

中国が内需経済にシフトした場合、日本企業にとっても大きな影響が及ぶ。

これまで日本の製造業は米国の景気に依存してきた。中国に対する輸出も、多くが最終製品として米国で消費されるので、見かけよりもさらに米国依存度は高い。だが、米国の景気失速と中国経済の内需シフトが同時に発生した場合、日本企業は業績を維持するため、中国にも最終製品を売り込む必要が出てくる。トヨタをはじめとする日本の自動車メーカーが相次いで中国シフトを鮮明にしているのはこうした事情からである。

米中の貿易戦争はひょっとすると、中国の経済構造の転換を加速させ、日本メーカーのアジア・シフトという結果をもたらすかもしれない。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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