コラム

他人を信用できない「ROM専」日本人のせいで経済が伸びない?

2018年07月24日(火)18時00分

相手を信用できないことのコストは膨大

もしかすると日本人や日本社会がグローバル化できないのは、英語などの問題ではなく、他人を信用できないという性格が大きく影響している可能性がある。

実は経済活動において、相手を信用できないことによって生じるコストは膨大な金額になる。

信用できない相手と取引するリスクを軽減するためには、多額の調査費用をかけて相手を調べたり、すべての案件で契約書を作成するといった作業が必要となり、時間とコストを浪費する。これを回避するには、よく知っている相手だけに取引を絞り、狭い範囲で顔を合わせて経済活動するしか方法がなくなってしまう。

日本企業の多くは、後者によってそのリスクを回避しているわけだが、ムラ社会的なコミュニティでは、十分な市場原理が働かず、結局は多大なコストを支払う結果となる(信用できない性格が、日本においてテレワークが浸透しない原因のひとつになっている可能性もある)。
 
血のにじむようなコスト削減努力を行っても、あまり儲かった実感が得られないことの背景には、こうした見えないコストが関係している可能性があるのだ。

これからの時代は、否が応でもビジネスのネット化がさらに進展する。

ネットという広域プラットフォームを十分に活用するためには、まずリアルな世界において、他人を信用する「能力」が必要となる。信用しつつも過度に依存しないという振る舞い方が身に付けば、ネット空間が異質なものにはならず、ビジネスのネットへの移行もスムーズになるはずだ。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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