コラム

米中の北朝鮮「懲罰」に、能天気な日本はお呼びでない

2017年10月21日(土)15時00分

大規模な武力行動の前には、きなくささが漂うものだ。朝鮮半島周辺にはもっと多数の米艦艇が集結し、中国の大軍が北朝鮮との国境地帯に移動するだろう。そのにおいが今はまだ感じられない。ということは、トランプと習は、核開発の是非は話し合いの対象にはしないと言い張る金を押さえ付け、交渉のテーブルに引きずり出すため、圧力を最大限かけているだけなのではなかろうか。

この線で収拾できるなら、日本周辺でパラダイムシフトは起こらない。だがもし、トランプが韓国防衛の負担軽減を狙って、北朝鮮と平和条約を結ぶ決心をすると、東アジアの国際政治の枠組みは一変する。在韓米軍は撤退し、裸になった韓国は北朝鮮との統一を目指すだろう。

そのときは日本の隣にロシア以上のGDPを持つ核保有国が出現し、米中ロ各国を相手にバランス外交を繰り広げることになる。こうした動きの中で何もできず、しないでいる日本。敗戦国の耐えられない軽さ――選挙戦のむなしき喧騒の中でそう感ずる今日この頃だ。

<本誌2017年10月24日号掲載>

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プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

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