アメリカの「国境調整税」導入見送りから日本が学ぶこと
実は消費税制度の大きな問題として、一度導入されると、上記のような特定税制撤廃の他にも、通常の税率よりも低く設定することで対象業界が有利となる軽減税率を要求するなど陳情合戦に陥ることが、既に40年以上前のニクソン政権下での税制改革の際に取り沙汰されていました。だから企業はけしからんといった稚拙で短絡的な企業バッシングをここでするつもりは全くありません。
企業は営利目的で活動している以上、税制であれ他の規制であれ、少しでも優位にとの食指が伸びるのは当然です。だからこそ税制などの制度設計をする場合には公平で自由な競争を阻害しないことが非常に重要で、行政側はそこに留意すべしというのが米国のスタンスでもあります。今回もそうですが、先進各国が全て消費税・付加価値税を採用してもなお、連邦国家として米国だけは頑として導入に踏み切らなかった理由の1つはそこにあります。
【参考記事】大胆不敵なトランプ税制改革案、成否を分ける6つのファクター
増税による国内需要の減退、国内市場・消費者への破滅的な影響があると実体経済への悪影響に深い理解を示し、公正な競争の観点から各社・ディーラーが米国での消費税導入反対の強烈なロビー活動に尽力されたのであれば、特定税制撤廃や軽減税率などの対症療法ではなく、日本の消費税についても同じように、消費税制度そのものへ根本的な問題提起をしていただけないだろうかと切に願うわけです。
そして、世界最大の債務国(世界最大の債権国は日本)である米国ではありますが、この度、共和党にBATを諦めさせ、国内経済と税の公平性の観点からトランプ政権が下した今回の判断について、消費税増税ありきで拳を振り上げている日本の政治家の方にも是非、これを機にいったんニュートラルな立場に立ち返って、米国内で取り沙汰された論点などを参考にお考えをいただきたいと思う次第です。
トランプ政権下でのBATあるいは消費税・付加価値税導入はこれで見送りが決定的となりましたが、トランプ政権としてはBATや消費税・付加価値税とはまた別の独自の国境税案を持っています。それをいよいよ持ち出すのか、腰砕けとなるのか。引き続きフォローしたいと思います。
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