日本経済メルトダウンを防いだ3.11日銀の闘い
日銀の使命とは何か、震災時の対応を振り返ればおのずと見えてくる Toru Hanai-REUTERS
ここ2回ほど日銀の金融政策について思う所を忌憚なく述べさせていただきました。論旨は以前からお伝えをしております通り、金融政策で出来ることには限界があるという点に変わりなし。日銀は必要な時に必要なだけ資金供給をする、それこそが重要であり、そうした万全の機能を日銀は有しています。平常時に、むやみやたらに量的緩和をしなくても大丈夫であることは日銀自らが証明をしています。
日銀が必要とあらばふんだんに資金供給をする準備も能力も有していることについて、その端的な事例は白川総裁時代にありました。3.11東日本大震災で被災した東北の金融機関から短期金融市場を通じて緊急かつ大量の資金ニーズが出て来ることは震災直後から予想されました。大規模な災害となれば先行き不安から市場参加者ならずとも手元に資金を置いておきたいというのが心情です。こうしたニーズに迅速かつ適切に対応していくことが金融当局に求められるわけですが、特に金融機関が日々資金の融通を行っている短期金融市場はこうした緊急事態には即座に反応しますので、不安定になりがちです。そこで流動性の確保が非常に重要となってきます。その流動性を供給するのが日銀であり、英語では「ラスト・リゾート(last resort=頼みの綱)」、日本語では「最後の貸し手」と中央銀行が称される所以でもあります。
地震が発生したのは11日金曜日の午後3時前。ほぼ当日の資金の決済は決まっているような時間帯ですから、本格的な資金ニーズが出て来るのは週明けとなります。事実、14 日月曜日の短期金融市場では、市場参加者が資金放出(貸出し)を控えたため、金融機関同士での取引が成立しにくい=資金が欲しいと思っている金融機関に資金が渡らない状況でした。当時の記録(「東日本大震災直後の金融・決済面の動向:データに基づく事実整理」日本銀行決済機構局より)として、無担保コール取引(もっとも代表的な金融機関同士の取引)の取引高は前営業日対比で3割程度減、日本国債清算機関のレポ取引の債務引受高も2010~2011 年の期間で最低水準まで、流動性が急低下していました。それに対して充分な供給を即時実施したのが当時の白川日銀です。
被災者には急場を取り敢えず凌ぐ現金が必要でしたし、企業間の資金決済が滞れば経営状態に問題のない企業までも連鎖倒産を含めたリスクが発生します。例えば被災地の現場の日銀仙台支店では上記に書かれてある通り、震災直後から窓口をあけ直ちに約400億円もの現金を支払い、阪神淡路大震災の4倍近い量の引き換えを行っています。
被災3県の金融機関からの声として、日銀はいくらでも必要な現金を即座に渡してくれるということを私自身も耳にしましたし、現地の金融機関はそうしたお金を被災者の方々に懸命にお渡ししているとも。実体経済に着実に届く、まさに血の通った資金供給です。
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