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温暖化防止会議COP21、したたかに日本の利益につなげよ
9月にパリのエリゼ宮でCOP21公式プレイベントが行われた Charles Platiau-REUTERS
ある2010年に開かれた地球温暖化をめぐるシンポジウムの光景だ。温暖化防止活動をするNPOの女性代表が「温室効果ガスを減らせ。産業界は負担しろ」と、繰り返し主張した。司会者と経済団体の人が「日本の利益を考えて」と言った。すると、その代表は「私たちは『地球人』です。あなたもそう。日本の利益なんてどうでもいい」と断言した。他のパネリストが絶句すると、その代表は憮然とし、シンポジウムの雰囲気がさらに悪くなってしまった。
今年12月にパリにおいて、COP21(国連地球温暖化防止条約第21回締約国会議)が開催される。その見通しを示してみたい。この国際会議では、どの国も「地球のために」という建前を唱える。ところが実際には負担を他国に押しつけようという、したたかな振る舞いをしている。冒頭のように、過度に国際体制に期待するのは、日本にある不思議な思想の流れだ。
この会議では2030年までの国際的な温暖化防止対策の枠組みがまとまる見通しだ。事前交渉では、「誓約と審査(Pledge and Review)」という形で、温室効果ガスの削減を行う仕組みになると見込まれる。各国が削減対策を掲げて国連の事務局に提出(誓約)、その実施のチェックを国連に受ける(審査)という形だ。
温暖化防止対策では1997年のCOP3で決まった京都議定書による国際的な枠組みがあった。体制がある。温室効果ガスの削減数値目標を、条約上の法的拘束力のある形で決めて、ぎりぎりと制約を加える体制だった。しかし、それは結局、うまく機能しなかった。COP21で決まる枠組みは、まったく別のものになるだろう。
一見すると温室効果ガス削減のために京都議定書のような仕組みは有効に見える。ガスの排出量は、その主なものを占める二酸化炭素(CO2)の排出、つまり化石燃料の使用とエネルギー消費と連動する。CO2の削減はエネルギー消費を減らし、経済活動にブレーキをかける。「トレードオフ」、つまり一つの対策の代わりに、一つの代償を払うことになる。そのために失敗したのだろう。
COP21の次に識者は注目
COP21では、世界一の温室効果排出量を持つ中国(全体の20%強程度)、第2位米国(同20%弱程度)が合意受け入れを表明し、全世界の温室効果ガス排出分の80%を占める国が削減目標を出している。この「誓約と審査」の形で、合意はまとまりそうだ。
それでは、交渉の焦点は何か。10月に東京で開かれたICEF(Innovation for Clean Earth Forum)で、世界各国の温暖化政策の有識者の意見を聞く機会があった。識者らは、そろって、COP21の合意の「次の段階」に注目していた。
現時点で各国が誓約しようとしている数値目標は、厳密に積み上げたものではない。例えば、2030年までに13年度比で26%削減という日本の目標は今、ほとんど動いていない原子力発電の活用や、エネルギー効率の大幅な改善を見込んでのものだ。他国も夢のようなことを言っている。「どの国の削減目標も真剣に検討されたものではない。パフォーマンスだ。COP21は「誓約の氾濫」になるかもしれない」と、米国の共和党政権で温暖化政策のアドバイザーを務めた米カリフォルニア大学のデイビッド・ビクター博士は分析していた。
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