コラム

Dappi問題で置き去りにされた「敵」を叩くより大事なこと

2022年10月29日(土)15時41分

裁判のその後が重要

より自由で公正な政党同士の競争を促すために、どのような制度設計があり得るのかといった論点が導き出せたはずだが、こうした動きも極めて弱いままだった。専門家からはこうした声は上がっていたが、強かったのはあくまで目先のスキャンダルへの反応だった。

あれだけ大きく騒がれたにもかかわらず、その後、人々の関心は東京オリンピックとコロナ、衆院選、ロシアによるウクライナ侵攻、安倍元首相銃撃事件、旧統一教会問題と移り変わっていった。

人々にとって大事だったのは、その時々の「敵」に対する効果的な一撃であり、論点を深めることでなかったとも言える。問題を検証していくことよりも、結論ありきで、それに沿った証拠が出てこないとなれば次のスキャンダルに関心が向かっていく。果たして、こうした姿勢で何かが良くなっただろうか。

裁判が終わった後に、大々的に上記の論点が深められることがあるとすれば、大いに歓迎したい。現状を見る限り、その頃にはもう次の話題に関心が移っているような気がしてならないのだが......。

プロフィール

石戸 諭

(いしど・さとる)
記者/ノンフィクションライター。1984年生まれ、東京都出身。立命館大学卒業後、毎日新聞などを経て2018 年に独立。本誌の特集「百田尚樹現象」で2020年の「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞作品賞」を、月刊文藝春秋掲載の「『自粛警察』の正体──小市民が弾圧者に変わるとき」で2021年のPEPジャーナリズム大賞受賞。著書に『リスクと生きる、死者と生きる』(亜紀書房)、『ルポ 百田尚樹現象――愛国ポピュリズムの現在地』(小学館)、『ニュースの未来』 (光文社新書)など

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