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バカ売れ『反日種族主義』の不可解な二枚舌
こうした文脈やダブルスタンダードが存在しないかのように、あるいは目をつぶり、日本に持ち込んだ「仕掛け人」は産経新聞編集委員の久保田るり子だ。彼女が文藝春秋の編集者を本書の編著者である李栄薫(イ・ヨンフン)につなぎ、邦訳の解説で「研究者の矜持と深い祖国愛が流れている」と激賞してみせる。
仮にも保守系メディアの記者が「文在寅政権の敵である韓国保守派は日本の味方」だと言わんばかりに、編集協力者に名を連ねるのである。
日韓危機が深化する理由の一端は、こうした「敵の敵は味方」という、自分にとって都合のいい論理で売らんとする商法にあるのではないか。敵対する相手を設定し、敵を論破するだけのゲームに熱中しているうちに、全ての論争は目先の政治に回収されていく。
結果、こじれた日韓関係をどう立て直すのかという建設的な議論からは遠ざかるだけだ。同書に書かれていることは「韓国の保守派はそう言うだろうなぁ」の範囲内。だがこの本をめぐる社会現象には、面倒で、困った問題がたくさん詰まっている。
<本誌2020年2月4日号掲載>
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