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話題書『ネットは社会を分断しない』は、単なる「逆張り」本なのか?
Satoko Kogure-Newsweek Japan
<「ネットは社会を分断しない」は本当か――。ネットは社会の分断に寄与している、という従来の「ネット悪玉論」に異を唱える新説が登場した。だが、本当にそうなのか? 同書の「逆張り」にこそ異を唱えたい>
今回のダメ本
困ったタイトルの本が出たな、というのが最初の感想だった。一応、断っておくと、同書による調査結果そのものが困ったという話ではない。上がってきたデータをどう子細に読み解くかが大事なのに、「インターネットで分断は進まない」という結論の新奇性に飛び付く人は絶対に出てくるだろうと思ったからだ。
「逆張り」──市場で、市場人気に逆らって売買すること(「日本国語大辞典」より)──好きはいつの時代もいる。典型的な困った書評は早速出た。2019年11月30日付の朝日新聞に掲載されたもので、執筆者は同紙論説委員の石川尚文である。
田中説への批判は多少は書いてあるものの、基本的には好意的に評しており、結論は「安易なネット悪玉論に対し、データを示して正面から疑義を突きつけた意味は大きい」と結ぶ。発売から間もなくして書評が出たことは、メディアが注目している証しだ。
私は筆者の1人である慶応義塾大学の田中辰雄教授(計量経済学)と、インターネットテレビの番組で1度議論した。その場で本人にも伝えたが、このデータを読み解く限り、「ネットは分断をもたらす」という多くの先行研究は覆せないと考えている。この本のベースになっているのは、3回にわたって筆者らが取り組んだ、2万~10万人規模のアンケート調査の結果である。
象徴的な結果と分析を紹介しておこう。彼らは「憲法9条改正」「原発廃止」といった、リベラル派と保守派で賛否が分かれそうな政治的イシューについて、調査を試みた。
その結果、ネットに多く触れている若年層のほうが、高齢者よりも分極化していないことが分かった。ネットが分断を呼ぶのであるならば、ネット利用に積極的な若い人ほど分極化していないとおかしいはずだ──。
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