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なぜトランプは根強く支持されるのか──歴史観と人種問題に見るバイデンとの対立
「左派がアメリカの物語を歪めてきた」とトランプは訴える(2月28日、フロリダ州オーランド) Joe Skipper-REUTERS
<人種や属性を理由とした機会不平等の是正を誓うバイデンと、「白人・キリスト教徒のアメリカの物語」に固執するトランプの文化戦争>
トランプ前大統領の動静は、いまだに注目の的である。
彼に対する評価は、いまだに真っ二つに割れている。
トランプ氏を過去の人間と思わせるのに十分な世論調査の数字や報道もあれば、全く逆で、共和党内だけではなく一般社会でも根強い支持を示す調査や報道もある。これほど世論調査があてにならない事態も、そうそうあるものではない。
一般の日本人から見ると、とても信じられないような感じがする。トランプ支持者は、連邦議会議事堂を暴力で襲撃さえした。中には、カルト集団のような人たちも加わっている。もちろん、彼らは支持者のごく一部ではあるが。
なぜこれほどトランプ氏は支持されるのだろうか。
今アメリカを襲い、国を二分している問題は、大変深刻な問題だ。それは人種問題であり、アメリカ建国の意味を変えそうな根源的な問題となっている。
今までの「常識」をくつがえしかねないほどのこの大論争は、「文化戦争」と呼ばれている。
この物語は、アメリカ史上初の黒人大統領、バラク・オバマが登場したことから始まっている。オバマ氏の登場は、何百年にもわたるアメリカ社会の「基礎」をくつがえした。基礎とは「白人のキリスト教徒のアメリカ」だ。
トランプ大統領の時代は、オバマ時代に対する猛反発の時代だったと言えるだろう。そしてそれは、今でも続いている。
反発するアメリカ人を常に支えてくれる、並外れて強い指導者がトランプ氏である。
そんなトランプ前大統領が掲げたのが「愛国教育」だった。この政策を見ると、なぜこれほどトランプ支持が根強いのか、大きな理由の一つを明確に見て取ることができる。
しかし、バイデン大統領は、トランプ前大統領が創設した「愛国教育」プランを中止した。
正確には、「愛国教育」を推進するために作られた委員会を解散する──というものだ。バイデン氏が大統領になるとすぐに署名した、執行命令のうちの一つである。
以下に、何がアメリカに起こっているのか、詳しく説明したい。
黒人と反発する白人の対立
大きな転機となったのは、2020年5月、ミネアポリスで黒人のジョージ・フロイド氏が警察に拘束されて殺害されたことだ。
録画された動画は、ネットで全米中に拡散され、全国でデモや抗議活動、暴動すら起きた。これは大規模な「Black Lives Matter(黒人の命は大事)」運動に発展してゆき、外国にも波及した。
そのようなうねりの中、全米各地で「黒人差別的」とみなされた歴史的な銅像や記念碑が破壊されるようになった。
アメリカ南部の英雄の銅像は、典型例だ。
19世紀中頃の南北戦争(『風と共に去りぬ』で有名)では、「南部同盟」は、農業にとって必要な労働者である黒人の奴隷制を支持した。結局、工業が発達していた北部が勝利して、南部同盟は敗北した。北部を率いるリンカーンは、黒人奴隷を解放した。
この銅像が、「奴隷制支持者」として、攻撃の対象になった。
それだけではない。アメリカ建国の偉人達として尊敬されてきたはずの、初代ワシントン大統領、第3代ジェファソン大統領についても「生前に奴隷を所有していた」等と批判された。一部地域では銅像や記念碑が破壊された。
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