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RCEPで拡大する中国の影響力......中国が世界一の経済大国となる日を想定しなければならない
ASEANはRCEPに参加する一方でFOIP(自由で開かれたインド太平洋)にも関わってゆかねばならない。そのため2019年6月にASEAN版のインド太平洋構想「ASEAN Outlook on the Indo-Pacific」を公開し、その後のメディア向けブリーフィングで、アメリカのFOIPや中国の一帯一路などの他の構想と連携してゆきたいと語っている(JETRO)。
避けられない中国の影響力拡大
中国はアメリカとその同盟国のサプライチェーンから締め出されたが、RCEPは新しいサプライチェーンの拡大の手助けになる。
中国の一帯一路の参加国は126カ国となり、全世界の人口の70%、GDPの半分を超えたという世界経済フォーラムの推計もある。なお、欧州復興開発銀行の推計では全世界の65%の人口と3分の1のGDPとなっている。少なくとも人口に関しては世界の過半数をかなり上回っているのは確かのようだ。
2035年には中国のGDPがアメリカを抜いて世界一となると予想されている。こうした中国と一帯一路の規模を考えると、相対的にアメリカやヨーロッパの影響力の低下は免れない。
RCEPを中国が主導する場合、参加国の増加が考えられる。たとえば、アメリカと日本主導のアジア開発銀行(ADB)に対抗して、中国が設立したアジアインフラ投資銀行(AIIB)には中東、アフリカ、ラテンアメリカ諸国まで参加しており、100カ国を超える世界的な組織となっている。
今回のRCEPも加盟国が増加し、アジア・アフリカ経済連携となれば、その経済規模と影響力は計り知れない。経済のことをだけを考えれば参加国のメリットも大きいが、中国の存在感はさらに大きくなる。RCEPの英語の名称は、Regional Comprehensive Economic Partnershipであり、直訳すると、地域包括的経済連携となり、どこにも「東アジア」という言葉はない。
そもそもオーストラリアとニュージーランドは東アジアではないし、参加を見送ったインドは南アジアである。アジア・アフリカさらにはラテンアメリカまで拡大してもおかしくない。アフリカとラテンアメリカでは中国の存在感がすでに大きく、これらの地区の今後の成長を加速させるためにも有効な方法である。
今、必要なのは事実を認めること
前掲の世界経済フォーラムの記事にはこう書いてある。
「The US and Europe must also accept the fact that the balance of economic power is shifting to the east」
世界経済の中心はヨーロッパやアメリカではなくなりつつある。そして経済をてこに政治外交の影響力も拡大している。前回の記事(新疆ウイグル問題が暗示する民主主義体制の崩壊......自壊する民主主義国家)にも書いたが、中国を支持する国が多数ある事実と、それらの国々の国際的存在感の拡大を認めなければならない。中国が世界一の経済大国となる日、一帯一路が人口と経済で世界の主流となる日を想定しなければならない。そのうえで今、なにをすべきかを考える時期に来ている。
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