米効率化省の有力メンバー、サイバー犯罪組織への関与疑惑が浮上

実業家のイーロン・マスク氏(写真)が率いる「政府効率化省(DOGE)」のインターネット技術者チームのメンバーとして知られるエドワード・コリスティン氏がかつて、盗難データの取引を手掛けたり、米連邦捜査局(FBI)の捜査官に迷惑行為を行ったりするなどしたサイバー犯罪組織とつながりを持っていたことが分かった。3月24日、ワシントンで撮影(2025年 ロイター/Carlos Barria)
Raphael Satter
[ウィルミントン(米デラウェア州) 26日 ロイター] - 実業家のイーロン・マスク氏が率いる「政府効率化省(DOGE)」のインターネット技術者チームのメンバーとして知られるエドワード・コリスティン氏がかつて、盗難データの取引を手掛けたり、米連邦捜査局(FBI)の捜査官に迷惑行為を行ったりするなどしたサイバー犯罪組織とつながりを持っていたことが分かった。ロイターがデジタル化された記録を確認した。
政府のダウンサイジングを目指すDOGEは公的ネットワークへの広範なアクセス権を与えられている。コリスティン氏についてはこれまでにもわずか19歳であることや、自ら「ビッグボールズ(度胸のあるヤツ)」と名乗っていたことが報道の中心だった。
しかし企業の記録やデジタルデータおよび元関係者6人への取材によると、コリスティン氏は2022年頃の高校在学中に「ダイヤモンドCDN」というネットワークサービス会社を運営し、この企業のユーザーの一つに「EGodly」と名乗るサイバー犯罪集団が運営するウェブサイトが含まれていた。コリスティン氏とEGodlyの関係が明るみに出るのは初めてだ。
EGodlyは23年2月15日に秘匿性の高い通信アプリ「テレグラム」への投稿で、コリスティン氏の会社がサイバー攻撃からの防御などのサービスを提供したことに対して感謝の意を表し、同社の技術力を賞賛していた。
またロイターが確認したデジタル記録によると、EGodlyが運営していたウェブサイト「dataleak.fun」は22年10月から23年6月にかけて、ダイヤモンドCDNおよびコリスティン氏が所有する他の事業体に登録されたインターネット・プロトコル(IP)アドレスに紐付けられていた。さらにこの期間中にEGodlyのサイトにアクセスしようとした一部のユーザーはダイヤモンドCDNの「セキュリティーチェック」に誘導されることもあった。
コリスティン氏はコメント要請に応じなかった。DOGEにコリスティン氏について問い合わせるメールを送ったが返信はなかった。
コリスティン氏は米国務省と米国土安全保障省傘下のサイバーセキュリティー・インフラストラクチャー・セキュリティー庁(CISA)の「上級顧問」になっている。両機関の関係者1人ずつが職員録でコリスティン氏の名前を確認したと証言した。
一方、ビジネス向けSNSのリンクトインにおけるコリスティン氏のプロフィールは「米政府のボランティア(インターン)の配管工」となっている。
国務省はコリスティン氏に関する問い合わせに返答せず、CISAもコメントを控えた。EGodlyのテレグラムチャンネルは過去1年間にわたり更新が止まったまま。また、EGodlyに関与した、または関わりのあった8人にコメントを求めたが、いずれも回答は得られなかった。
<彼らは悪い連中>
インターネット情報分析会社のドメインツールズによると、ダイヤモンドCDNのウェブサイトは22年半ばに登録され「優れたセキュリティーツール」を提供するとともに「インフラコストの削減」を支援すると謳っていた。
一方、EGodlyは23年に自社のテレグラムチャンネルで、電話番号の乗っ取り、中南米や東欧の法執行機関のメールアカウントへの侵入、仮想通貨の窃盗を行ったと自慢げに説明していた。同年初めには自分たちを捜査しているとするFBI捜査官の個人情報を拡散し、電話番号や家の写真などをテレグラム上で公開。さらにこの捜査官へのいたずら電話の音声記録や、車内から撮影した動画を投稿した。この動画にはデラウェア州ウィルミントンにある捜査官の家の前を通り過ぎる車内から「おれたちはEGodlyだ。お前はクソ野郎だ」と叫ぶ様子が映っていた。
ロイターはEGodlyのサイバー犯罪について独自に検証することはできなかった。しかし記録された動画については、ウィルミントンの住所を訪れて真正性を確認した。
EGodlyの標的になったFBI捜査官によると、EGodlyが法執行機関の目にとまったのは、虚偽の緊急通報を行って武装した警察部隊の出動が必要になるような「スワッティング」と呼ばれる行為と関係があったため。今は退職しているこの捜査官は「彼らは悪い連中だ。絶対にまともなグループではない」と述べた。ただ、それ以上は迷惑行為についてのコメントを拒否し、EGodlyがFBIの捜査対象であったのか、あるいは現在も捜査が続いているのかについても明言しなかった。FBIは、EGodlyに関するコメント要請に応じなかった。
EGodlyによる嫌がらせを受けた人物やEGodlyを追跡しているサイバー犯罪研究者は、グループの構成員などからEGodlyは熟練した犯罪者で構成されていると見ている。
バイデン前政権下でCISAの副長官を務めたニティン・ナタラジャン氏は、たとえコリスティン氏とEGodlyの関係が短期間だったとしても、わずか2年前にEGodlyにサービスを提供していた人物が現在、政府のネットワークに広範なアクセス権を持つグループの一員になっていることは憂慮すべき事態だと指摘。「これは遠い過去の話ではない。最近の活動や、彼が関与していたグループの性質を考えると、間違いなく懸念すべきことだ」と眉をひそめた。