アングル:逮捕されたイスタンブール市長、エルドアン氏最大の政敵になった経緯

トルコ最大都市イスタンブールの市長であり、汚職容疑などで拘束、収監されたエクレム・イマモール氏(54、写真中央)に対し、エルドアン大統領(71)が主要な政敵だと見なすようになった出来事は約6年前にさかのぼる。1月31日、イスタンブールで撮影(2025年 ロイター/Umit Bektas)
Daren Butler
[イスタンブール 24日 ロイター] - トルコ最大都市イスタンブールの市長であり、汚職容疑などで拘束、収監されたエクレム・イマモール氏(54)に対し、エルドアン大統領(71)が主要な政敵だと見なすようになった出来事は約6年前にさかのぼる。イマモール氏はこの時、市長選での初当選を取り消した当局者らをののしり、有罪判決を受けた。
今月のイマモール氏の拘束、収監を巡って反発した市民らが起こした抗議デモは10年超ぶりの規模に発展している。
イマモール氏は今月19日に警察に拘束される前、短文投稿サイト「X」に投稿した動画で、これは国民の意思に反する「クーデター」だと主張。「我々は大きな圧政に直面しているが、私は決してあきらめないということを知ってほしい」と訴えた。そして「私はあの人物と闘い続ける」と、エルドアン大統領への闘志を燃やした。
エルドアン氏は、自身が司法を動かすのに一役買ったとの野党の主張を否定し、司法は独立していると反論した。
イマモール氏は2019年3月のイスタンブール市長選で勝利したが、当局は5月に投票結果の文書への無記名や、投票箱を管理する係員が無許可だったといった理由で結果を無効にした。
イマモール氏はその直後の演説で選挙管理当局者らを「愚か者」とこき下ろし、検察は4年の実刑判決を求刑。20年に2年7カ月の実刑判決が下り、数千人の抗議デモが起きた。
<法廷闘争>
イマモール氏の法廷闘争は皮肉にも、エルドアン氏自身の法廷闘争を思い起こさせる。エルドアン氏はイスタンブール市長だった1999年、反世俗主義とみなされた詩を朗読したため4カ月間投獄。その2年後に公正発展党(AKP)を立ち上げ、2002年に政権を握った。
ベテランのコラムニストのフィクレット・ビラ氏はハルクTVのウェブサイトで、エルドアン氏が法廷闘争で苦境に陥った後に立ち直った政治家の数少ない一例だと指摘。その上で「たとえ政府がイマモール氏の出馬を阻止したとしても、彼を政界から締め出すことはできない」との見解を示した。
この2年間に、イマモール氏への司法からの攻撃は加速した。2014-19年にかけ、イマモール氏がイスタンブール市ベイリクドゥズ区長を務めていた期間に関連する入札談合事件で裁判所は23年6月、イマモール氏に対する審理を開始した。
新たな法廷闘争が勃発したにもかかわらず、イマモール氏は24年3月の市長選で再選された。
昨年終盤にはイマモール氏をはじめとする多くの野党幹部が広範な法的弾圧を受け、数人は地位を失っている。
イマモール氏は今年初め、野党が首長を務める自治体を相手取った訴訟について批判したことを巡り、司法に介入しようとしたとの罪を否認した。
検察当局は2月、イスタンブール市の検察官を批判したとしてイマモール氏を起訴し、公務員を侮辱したとして7年の懲役刑を求刑した。
さらに警察は今月19日、イマモール氏を汚職とテロリストのグループをほう助した容疑で拘束。裁判所が23日に刑務所への収監を決めた。