ニュース速報
ワールド

移民送還は「ナチス党員よりひどい扱い」、米高裁判事が批判

2025年03月25日(火)09時23分

 3月24日、トランプ米政権が戦時法の「敵性外国人法」に基づいて実施した不法移民の強制送還を連邦地裁が差し止めたことを巡り、政権側が不服として控訴した裁判の審理が首都ワシントンの連邦高裁で行われた。写真は米国から送還されたギャングメンバーとされる人々を連行するエルサルバドルの警察官。エルサルバドル国際空港で撮影。エルサルバドル当局が16日提供(2025年 ロイター)

Luc Cohen

[24日 ロイター] - トランプ米政権が戦時法の「敵性外国人法」に基づいて実施した不法移民の強制送還を連邦地裁が差し止めたことを巡り、政権側が不服として控訴した裁判の審理が24日、首都ワシントンの連邦高裁で行われた。

担当する3人の判事のうちの1人で民主党系のパトリシア・ミレット判事は政府側の弁護士ドリュー・エンサイン氏に、強制送還対象者らがエルサルバドルに移送される前にベネズエラの犯罪組織「トレン・デ・アラグア」のメンバーだという政権の主張に反論する時間が与えられたかと問いただした上で「(第二次世界大戦中の米国で)敵性外国人法が適用されたナチス党員でも今回よりましな待遇だった」と非難した。

これに対し、エンサイン氏は「ナチスにたとえることには全面的に異議を申し立てる」とし、連邦地裁判事には外交問題に関する大統領の決定を見直す権限はないとして差し止め仮処分の取り消しを求めた。

トレン・デ・アラグアのメンバーとされた不法移民の家族は事実でないと否定。移送対象になったベネズエラのあるサッカー選手の弁護士は、好きなサッカーチームのレアルマドリードにちなんで王冠の入れ墨をしていたとの理由だけで米当局がトレン・デ・アラグアに属していると見なしたと述べた。

一方、共和党系のジャスティン・ウォーカー判事は、連邦地裁に強制送還阻止を訴えていた人権団体の弁護士に、大統領による安全保障上の措置を裁判所が制限した事例があったかどうか質問。弁護士は、人々に正当な法的手続きを与えることが安全保障を妨げるという立場を政府が掲げてはならないと意見した。

この問題ではトランプ大統領が強制送還の差し止め仮処分を出した連邦地裁の判事を激しくののしり、連邦最高裁のロバーツ長官が苦言を呈するなど波紋が広がっている。

ロイター
Copyright (C) 2025 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

中仏、ハイレベル戦略・経済対話を今年開催へ 北京で

ビジネス

フジ・メディアHD、日枝取締役が退任へ 経営体制見

ビジネス

ECB、経済軌道維持なら追加利下げも─ラトビア中銀

ワールド

台湾、トランプ関税への対応検討 エネルギー輸入や関
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取締役会はマスクCEOを辞めさせろ」
  • 4
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 5
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 6
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 7
    中国が太平洋における米中の戦力バランスを逆転させ…
  • 8
    【クイズ】アメリカで「ネズミが大量発生している」…
  • 9
    反トランプ集会に異例の大観衆、民主党左派のヒロイ…
  • 10
    老化を遅らせる食事法...細胞を大掃除する「断続的フ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 5
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 6
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 7
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 8
    古代ギリシャの沈没船から発見された世界最古の「コ…
  • 9
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 10
    【クイズ】世界で2番目に「レアアース」の生産量が多…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 6
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中