アングル:中国への最恵国待遇、米議会による撤回に現実味か トランプ氏意向受け
2月5日、トランプ米大統領が中国の貿易慣行への批判を続けていることで、通商専門家は米国の中国に対する恒久的正常貿易関係(PNTR)の適用が撤廃される可能性が高まったとの見方を示している。写真は米オークランド港に停泊中のカーゴ船。3日撮影(2025年 ロイター/Carlos Barria)
Koh Gui Qing
[ニューヨーク 5日 ロイター] - トランプ米大統領が中国の貿易慣行への批判を続けていることで、通商専門家は米国の中国に対する恒久的正常貿易関係(PNTR)の適用が撤廃される可能性が高まったとの見方を示している。実現した場合、中国の輸入品に対する関税が平均61%に上昇する可能性がある。
トランプ氏が就任初日の1月20日に出した大統領令は、中国とのPNTRを念頭に見直しの法整備を行うよう商務長官と通商代表に指示していた。
PNTRは、一般的には米国が貿易相手国に関税を課すことを抑える役割を果たす。2000年にPNTRが中国に適用され、中国から米国への輸出に大きく門戸を開いた。中国へのPNTRを廃止した場合には米国に輸入される中国製品への関税が自動的に跳ね上がり、トランプ氏が中国に課してきた税率をはるかに上回る可能性がある。
トランプ氏は「最初の一撃」と称して中国からの輸入品に10%の追加関税を課し、中国は米国への報復関税導入を発表した。トランプ氏は中国からの輸入品に最大60%の関税を課すと脅している。
ジョン・ムーレナー下院議員(共和党)とトム・スオジ下院議員(民主党)は1月、中国に対する最恵国待遇を定めたPNTRを撤回する「公正な貿易復活」法案を超党派で提出した。この法案は、中国からの輸入品の一部に対する関税を5年間で35―100%に引き上げる内容だ。
第1次トランプ政権以降、中国との貿易関係が不公正だと反発する声が高まる中で、中国に対するPNTR指定の撤廃を求める複数の法案が議会に提出されたが、これまでは議会での可決に十分な票を集めることができなかった。
しかし、通商専門家7人によると、民主党と共和党の両党議員の間で法案への支持が広がっており、PNTR撤廃法案が可決される可能性が高まっている。
戦略国際問題研究所のジム・ルイス上級副所長は、中国が世界の貿易ルールに従わないため「(PNTRを適用する)意味がなくなっており、廃止に年々近づいている」と指摘。「トランプ氏は中国とどのような取引ができるかを見極めようとしており、全てが選択肢になるだろう」との見方を示した。
下院歳入委員会のジェイソン・スミス委員長(共和党)も、中国のような国が米国人を「だます」ことを許してきた米国の「悪い」貿易政策を見直すように呼びかけている。
1人のビジネスコンサルタントと2人の弁護士によると、彼らの顧客企業は中国へのPNTRが取り消されるリスクへの備えを始めている。これに対応するため、顧客企業はサプライチェーン(供給網)を中国から移し、外国人従業員を本国へ戻し、中国への新規投資を控え、関税引き上げに伴うコストを他の当事者に転嫁できるように供給網の契約を再交渉していると明らかにした。
ホワイトハウス、商務省、米通商代表部(USTR)、ムーレナー氏の広報担当者はいずれもコメント要請に応じなかった。
<撤廃なら米GDP押し下げも>
中国へのPNTRが撤廃された場合の影響は大きい。オックスフォード・エコノミクスのエコノミストらが貿易団体の米中経済協議会(USCBC)のために作成した報告書によると、燃料を除く中国から米国への輸出品はいずれも、たとえ米系企業が中国で製造した場合であっても関税が現在の19%から平均61%へ跳ね上がると。
23年11月に発表された報告書は、中国へのPNTR撤廃は米国の国内総生産(GDP)を5年間で最大1兆9000億ドル押し下げ、米国で80万1000人の雇用を減らす可能性があると警告した。
USCBCは4日、中国が世界貿易機関(WTO)の義務や20年に米国と結んだ「第1段階の通商合意」で米国からの輸入を2000億ドル増やす取り決めを中国が果たしていないにしても、「PNTRを撤廃しようとする動きを支持しない」とコメントした。その上でPNTR撤廃は「目の前の課題に取り組むのに適した手段ではない」とし、「米国には中国の行動を変える他の手段がある」と訴えた。
トランプ氏は既に、PNTRを撤廃せずに中国に関税を課す他の手段があることを示している。
さらに、米中貿易摩擦がどのようにエスカレートするかは不透明だ。トランプ氏は関税を貿易交渉の取引の道具として利用しており、最終的に関税を課したとしても税率を見極めるのは難しい。
また、議会でPNTR撤廃法案に十分な支持を得られるのかどうかも不透明だ。仮に十分な支持があったとしても、議会が他の課題よりPNTRを優先するかどうかや、議会がトランプ氏の最終承認なしに法案を通過させるかどうかも見通せない。
アメリカン・エンタープライズ研究所のデレク・シザーズ上級研究員は「共和党は、トランプ大統領が通せと言うまで(PNTR撤廃)法案を通さないだろう」とし、「重要なのはトランプ氏からゴーサインが出るかどうかだ」と語った。
PNTR撤廃法案を可決するには上院で60票の賛成が必要となる。
下院で「チャイナ・ウィーク」と呼ばれた24年9月には米中関係に関わる25法案が採決された一方、PNTR撤廃法案は上程されなかった。
-
社会保険労務士/完全週休2日制/第二新卒歓迎/年間休日120日以上/外資系企業/語学力を活かせる
KPMG社会保険労務士法人
- 東京都
- 年収340万円~600万円
- 正社員
-
社会保険労務士/外資系企業/リモートワーク可能/完全週休2日制/転勤なし/年間休日120日以上
アークアウトソーシング株式会社
- 東京都
- 年収270万円~450万円
- 正社員
-
税務・税理士/完全週休2日制/語学力を活かせる/上場企業/未経験可/外資系企業
デロイトトーマツ税理士法人
- 東京都
- 年収550万円~600万円
- 正社員
-
税務・税理士/エージェントおすすめ求人/外資系企業/語学力を活かせる/経験者優遇/完全週休2日制
税理士法人東京クロスボーダーズ
- 東京都
- 年収500万円~1,000万円
- 正社員