アングル:「二つの性だけ」大統領令、米国のLGBTQ+コミュニティに激震
トランプ米大統領(写真)がLGBTQ+(性的少数者)コミュニティーへの保護を撤廃する一連の措置を導入したことで、さまざまな影響が出始めている。1月23日、ワシントンで撮影(2025年 ロイター/Kevin Lamarque)
Lucy Middleton
[ロンドン 29日 トムソン・ロイター財団] - パニックを起こした一家や自殺リスクの高まり、そして相談窓口への問い合わせ急増──。トランプ米大統領がLGBTQ+(性的少数者)コミュニティーへの保護を撤廃する一連の措置を導入したことで、すでにこうした影響が出始めていると、LGBTQ+団体や人権団体などが警鐘を鳴らしている。
トランプ氏は就任初日の20日、さっそく「女性を過激なジェンダー・イデオロギーから保護する」と題する大統領令を発し、連邦政府が認めるのは「男性・女性」の2つの性だけだと宣言した。
この大統領令は、「ジェンダー・イデオロギー」を推進するとみなされた政策や文書、資金拠出はすべて撤廃または停止する内容。ジェンダー・イデオロギーは、保守派グループがよく使う用語で、セックスやジェンダーに関する非伝統的な見解を広めるあらゆるイデオロギーを指す。
さらにトランプ大統領は28日、「化学療法・外科手術による性器除去から子どもを守る」と題する別の大統領令に署名。この大統領令は、19歳未満のあらゆる人を対象とした性適合治療への資金拠出と促進を停止するものだ。
懸念されるのは、こうした大統領令の施行が命に関わるという点だ。LGBTG+の若者の自殺防止に取り組む慈善団体「トレバー・プロジェクト」に研究者として参加するスティーブン・ホベイカ博士は、トムソン・ロイター財団に対し、「(連邦レベルで)反トランス政策が導入され、トランス支援政策が廃止されれば、自殺率が上昇するのは確実だ」と語る。また、9つのLGBTQ+支援団体は、トランプ氏の就任初日に緊急支援サービスと電話相談ダイヤルの利用が急増したとしている。
英紙ガーディアンの報道では、米国務省はすでに、今後は性別欄に「X」をチェックしたパスポートの発行申請を認めないよう指示しているという。性別欄の「X」は、性自認が男女いずれでもない人を考慮してバイデン政権時代に導入された改革だ。
アメリカ自由人権協会(ACLU)はLGBTQ+の訴訟支援団体「ラムダ・リーガル」と共にオンライン記者会見を開き、女性用刑務所に収容されていたトランスジェンダー女性の受刑者の一部が隔離用施設に移送され、男性用刑務所への移送を告げられたと述べた。
連邦刑務所に収監されているトランスジェンダー女性の受刑者の1人は、「2つの性」大統領令の無効を主張して1月26日に提訴した。
ラムダ・リーガルの主任弁護士オマール・ゴンザレス=ペイガン氏は「この大統領令は、この政権がトランスの人々の公民権保護を放棄することを示唆しており、懸念される」と述べた。
<濫発される反LGBTQ+法案>
トランスジェンダーの権利は、米国政界における大きな争点になってきた。2021年以降、年間数百本もの反LGBTQ+法案が提出され、ACLUでは2024年に533本の法案を確認している。
トランプ氏は再選をめざす運動の中で「トランス問題」を中心課題に据え、巨額の宣伝費用を投じて反トランスを訴え、「左派によるジェンダーの狂気」に終止符を打つと公約した。
2025年現在、全米50州のうち26州では、青少年を対象とした投薬、手術、メンタルヘルスなどの性適合治療が制限されている。1州を除いて、すべて共和党が主導する州だ。
「キャンペーン・フォー・サザン・イクォリティ(南部の平等をめざす運動)」による24年の報告書では、テキサス州ヒューストンのトランス未成年者の家族は、すでにケアを受けるために往復20時間を費やしており、トランプ氏による包括的禁止が実現すれば、当事者に残される選択肢はさらに限られるだろう。
「国内で治療を受けられないというのは、非常に恐ろしい状況だ」。母親として2人のトランスジェンダーの子を育て、テキサス州で「ペアレンツ・オブ・トランス・ユース」という団体を創設したマンディー・ジャイルズ氏は語る。
「成人では他国で治療を受けている例もあるようだが、費用面や合法性、治療の内容についての不安など、特有の課題が生まれる」
未成年に対する性適合治療を禁じる大統領令は、二次性徴抑制剤の禁止を求めている。これはテストステロンとエストロゲンの分泌を抑え、二次性徴の発現を止める治療法であり、賛否が分かれる。22年の研究によると、トランスジェンダーの未成年者は、この治療を受けることでうつ症状の発生率が60%減少するという。大統領令は未成年者に対する性適合手術も禁止しているが、ハーバード大学の研究によれば、こうした手術の事例は極めてまれだ。
<保守派優勢でヘイトクライムが増加>
調査会社ギャラップが収集した23年のデータによると、性自認がLGBTQ+に該当する人は米国の総人口の7%以上となった。4年前には6%弱だった。
性自認がトランスジェンダーである人の5分の1は13-17歳で、トランスジェンダーの若者は総人口の1.4%を占めると推計される。
FBIの報告によると、LGBTQ+コミュニティーを標的とするヘイトクライムは、2023年に過去最高の件数に達し、性自認を理由とする攻撃は前年から16%増加、性的指向に関するものは23%増加した。
複数のLGBTQ+団体は、連邦上下院、連邦最高裁、ホワイトハウスで保守派が優位となったことでLGBTQ+コミュニティーに対する攻撃が露骨になったと言う。
ACLUとラムダ・リーガルは、トランプ大統領の「2つの性」の宣言は、LGBTQ+差別に対抗するための保護を撤回するもので、トランプ大統領の1期目に見られた、宗教的理由によりLGBTQ+の人々に対するサービスの提供を拒否することなどを認めた措置と同じものだと指摘している。
保守派による政府改革計画「プロジェクト2025」は、同性婚のカップルによる養子縁組と養育を禁じ、政府機関で「性的指向」などの用語の使用を止めることを求めている。
トランプ大統領はプロジェクト2025との関係を否定し、昨年は「読んだこともない」と発言した。だが大統領は、プロジェクト2025の関係者に政権参加を要請している。
フロリダ州オーランドで養子縁組や生殖の権利の問題を専門とするカレン・パーシス弁護士は、「泣きながら電話をかけてくる依頼者が急増した」と語る。
「ある朝起きたら、自分たちは合法的な家族ではないと議会や裁判所から言われるのではないか、と脅えている」
今週に入ってトランプ大統領は、もう1件の大統領令に署名した。男性が「自分は女性である」と表明することは「軍人に求められる謙虚と無私の精神に合致しない」と述べ、トランスジェンダーの兵士が軍務に就くことを禁じる主旨のものだ。
1月28日には、市民権擁護団体「GLADロー」と「ナショナル・センター・フォー・レズビアン・ライツ(全米レズビアンの権利センター、NCLR)が、現役軍人6人を原告として、この大統領令の無効を求める訴訟を起こしている。
(翻訳:エァクレーレン)
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