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韓国、航空システムの緊急安全点検指示 国内最悪の事故受け

2024年12月30日(月)16時31分

韓国の尹錫悦大統領の職務を代行している崔相穆経済副首相兼企画財政相は12月30日、前日に起きたチェジュ航空機事故の復旧作業が終わり次第、国内の航空運航システム全体の緊急安全点検を行うよう命じた。務安国際空港で撮影(2024年 ロイター/Kim Soo-hyeon)

Ju-min Park Hongji Kim

[務安郡(韓国) 30日 ロイター] - 韓国の尹錫悦大統領の職務を代行している崔相穆経済副首相兼企画財政相は30日、前日に起きたチェジュ航空機事故の復旧作業が終わり次第、国内の航空運航システム全体の緊急安全点検を行うよう命じた。国土交通省は、国内で運航する事故機と同型の101機全てに緊急点検を実施するか検討中だと述べた。

29日、バンコク発のチェジュ航空7C2216便、ボーイング737ー800型機が南部の務安国際空港で胴体着陸に失敗し、滑走路の外壁に激突し炎上。乗客175人全員および乗員6人のうち4人が死亡し、国内では最悪の航空機事故となった。

崔氏は対策会議で、当面の最優先課題は犠牲者の身元確認と遺族への支援、生存者2人の治療だと強調。その上で「最終的な結果が判明する前でも、事故調査の過程を透明性をもって公表し、遺族に速やかに知らせるよう求める」と述べた。

また「事故収拾が完了次第、再発防止のため航空機運航システム全体の緊急安全点検を実施するよう運輸省に要請する」と表明した。

消防によると、調査当局は鳥が衝突するバードストライクや天候要因が原因の可能性があるとみて調べているが、専門家はなぜ航空機の速度があれほど速かったのか、なぜランディングギア(着陸装置)が下りていなかったのかなど多くの疑問があると指摘している。

国交省高官は30日の記者会見で、事故機が着陸する直前に管制塔が付近に鳥が見られると警告を出していたことを明らかにした。その直後に同機からバードストライクに遭ったと報告があったという。

その後、事故機は緊急事態を知らせる「メーデー」を発信し、着陸をやり直す意向を示した。その直後に同機は胴体着陸を行い、2800メートルの滑走路の約1200メートルの地点で接地し、そのまま滑走路の端にある構造物に衝突した。

国交省高官は、滑走路の端に設置されたローカライザー(着陸誘導安全施設)のアンテナが墜落事故でどのような役割を果たしたかについて調査中だと述べた。また、アンテナが設置されていた土手も含めて調査が進められている

航空安全専門家で独ルフトハンザ航空のパイロットでもあるクリスチャン・ベッカート氏は「通常、滑走路端に壁がある空港はない」と述べ、代わりに航空機を減速させて安全に停止させるアレスティングシステム(EMAS)が設置されていることが多いと指摘した。

調査当局は30日午前、まだ身元が確認されていない犠牲者の特定を続けた。

事故で犠牲になったのは主にタイで休暇を過ごし帰国する人たちだった。また、タイ国籍の乗客2人も亡くなった。

国交省当局者はフライトレコーダー(ブラックボックス)を回収したと明らかにしたが、外側に損傷が見られるとし、データ分析が可能かはまだ不明だと述べた。

国際航空規則に基づき、調査は韓国が主導し、事故機が設計・製造された米国の国家運輸安全委員会(NTSB)も参加する。

NTSBは韓国の航空当局を支援するため、米調査チームを率いると明らかにした。ボーイングと連邦航空局(FAA)も加わる。

務安空港は1月1日まで閉鎖されるが、仁川国際空港を含む国内の他の国際空港や地方空港は通常通り営業している。

格安航空会社(LCC)チェジュ航空の株価は30日の取引で一時15.7%急落し、過去最安値を付けた。

ロイター
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