伊瀬神宮の内宮への入口の五十鈴川にかかる宇治橋は20年に一度架け替えられている Sean Pavone-shutterstock
木造が、日本だけでなく世界でも注目され、それもにわかに注目され、どう対処したものか建築史家は戸惑っている。
木造注目の少し前に、建築緑化注目の一件がドイツであった。ドイツのグリーンパワーが、建築の屋上や激しい場合は壁までも草を植えて建築の断熱性を高め、冷暖房にかかるエネルギーを減らそうともくろんだ。
ドイツのカッセルという町で大規模に実現したと聞き、訪れると、日本ではありえないような雨漏り必至の作り方をしている。聞くと、ドイツでは雨漏りが問題になることはなく、少し漏っても、ご婦人方は「冬の乾燥時に肌がしっとりしていい」と好評なくらいだという。
日本の建築界にとって雨漏りは永遠のテーマだが、ヨーロッパの、とりわけアルプスの北側にとっての永遠のテーマは隙間風らしく、木が狂って隙間の生まれる木造サッシ(窓枠)を禁じている国もある。
雨漏りを気にしなくていいなら楽だ、と羨ましく思いながら、建築史家兼建築家が既に実践していた建築緑化を続けているうちに、グリーンパワーは建築緑化を止め、ソーラーパネルに転じたというニュースが入ってくる。
理由は、緑化とその維持にかかるエネルギーを何年かかけて算出した結果、余分にかかることが判明し、止めることにしたのだという。そんなこと、一棟やってみたらすぐ分かっただろうに......。
政治がらみの、政策がらみの建築関係の主張はアブナイ、との認識をグリーンパワーから学んだ後、地球環境がらみでにわかに起こったのが木造建築への注目だから、心して対応しなくてはいけない。
木造が注目されるのは、森の樹が空中の炭酸ガス(炭素)を吸収して木として固定するからだ。
炭酸ガスの塊としての木は、森で樹として生きているか、里で木造建築に変わるか、石炭となって地中に眠るうちはいいが、しかし、森で倒れて腐るか、里で使われた後廃棄されるか、土中から掘り出されて燃やされるかすると、固定していた炭素は炭酸ガスとなって空中に戻っていってしまう。
木や森には、炭素を固定する能力が備わり、昨今の〝炭素削減〟には確かに貢献するはずだから、日本がしなければならない炭素削減量の一部に計上してもいいと思うが、なぜか世界は認めてくれないらしい。
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