ウクライナ、NATO加盟改めて訴え 外相会合では進展なし
12月3日、ウクライナは領土保全の保証を引き換えに核兵器を放棄した1994年締結の「ブダペスト覚書」を非難し、北大西洋条約機構(NATO)加盟の必要性を訴えた。写真はウクライナのドネツク地方で、ロシア軍に向かって砲撃を行うウクライナ兵。ウクライナ軍提供(2024年 ロイター)
Tom Balmforth Andrew Gray Lili Bayer
[キーウ/ブリュッセル 3日 ロイター] - ウクライナは3日、領土保全の保証を引き換えに核兵器を放棄した1994年締結の「ブダペスト覚書」を非難し、北大西洋条約機構(NATO)加盟の必要性を訴えた。東部でロシアの激しい攻勢にあい、ウクライナ支援に消極的なトランプ氏の米大統領就任を控え、領土の保全が一段と重要かつ緊急性を増している。
一方、NATOとの外相会合は同日、ウクライナに対する加盟交渉への招待を巡って合意に達しなかった。
ウクライナのシビハ外相とNATO閣僚がブリュッセルで夕食をとりながら会談した後、リトアニアのランズベルギス外相は記者団に対し、加盟問題について「進展はない」と述べた。
NATOはウクライナ加盟への道のりは「不可逆的」と表明しているが、時期を決定しておらず、招待もしていない。トランプ次期米政権の立場を知るまで態度を決めかねている国もあるという。
<ブダペスト覚書を非難>
ブダペスト覚書では、ウクライナが保有する核兵器を放棄する見返りに、米、英、ロシアがウクライナの「安全を保障」することとした。
ウクライナ外務省は、覚書締結から30年となる12月5日を前に出した声明で「ブダペスト覚書は、戦略的安全保障に関する近視眼的判断の記念碑」と指摘。覚書は「ウクライナの利益を考慮するのではなく、ウクライナの利益を犠牲にした欧州の安全保障体制構築は失敗に終わることを、北大西洋条約機構(NATO)の指導者らに思い起こさせるものであるべきだ」とした。
ウクライナは、東部で親ロシア派の分離独立派が蜂起し、ロシアがクリミアを一方的に併合した2014年以降、覚書を非難してきた。東部紛争では、ウクライナ、ロシア、ドイツ、フランスが「ミンスク合意」を締結したが、完全な和平は実現しなかった。ゼレンスキー大統領は「ブダペスト覚書はもうたくさんだ。ミンスク合意はもうたくさんだ。同じ罠に3度はまるわけにはいかない」と述べている。
ウクライナ外務省は、ブダペスト覚書の署名国の米英、フランス、中国に安全保障の提供を支持するよう求めた。
「われわれは、ウクライナNATO加盟こそが、ウクライナの安全保障に関する唯一の真の保証であり、ロシアのウクライナなどへのさらなる侵略に対する抑止となると確信している」と述べた。