シンガポール中銀、政策据え置きもリスク警戒 年明け緩和観測

シンガポール金融管理局(MAS、中央銀行)は14日、金融政策を据え置いた。予想通りの決定だったが、アナリストは外部リスクへの防護として来年初めに政策緩和があるとみている。9月撮影(2024年 ロイター/Caroline Chia)
Xinghui Kok Yantoultra Ngui
[シンガポール 14日 ロイター] - シンガポール金融管理局(MAS、中央銀行)は14日、金融政策を据え置いた。予想通りの決定だったが、アナリストは外部リスクへの防護として来年初めに政策緩和があるとみている。
MASは、金融政策手段であるシンガポールドル名目実効為替レート(SドルNEER)の政策バンドの実勢上昇率(傾き)、バンドの幅、中心値をいずれも現行水準に維持した。
声明は「シンガポールのインフレ見通しに対するリスクは、3カ月前と比べ、よりバランスが取れている」と指摘し、成長の勢いが増したとした。
この日発表された第3・四半期の国内総生産(GDP)速報値は前年同期比4.1%増で、第2・四半期の2.9%増から加速し、エコノミスト予想(3.8%増)も上回った。製造業が寄与した。
OCBCのエコノミスト、セレナ・リン氏は「成長見通しは楽観的な方だ」とした上で、貿易立国のシンガポールにとって地政学と貿易摩擦が懸念事項であり、MASは来年1月の政策見直しで緩和することも可能だと指摘した。
キャピタル・エコノミクスのマーケットエコノミスト、シヴァン・タンドン氏も「金融引き締めの程度や期間が過度というリスクが顕在化し、MASは近いうちに政策を転換するだろう」と述べた。
MASは、2024年の経済成長率が貿易産業省の予測2.0─3.0%の上限に達すると予想したが、外部リスクが来年「重大な」不確実性をもたらすとの見方も示し、「地政学的・貿易摩擦の急激な悪化が、世界と国内の投資と貿易に多大な悪影響を及ぼす可能性がある」と述べた。
コアインフレ率については、24年末までに2%程度まで低下すると予想した。コアインフレ率は、23年初めに5.5%まで上昇した後、鈍化し、7月は2.5%と2年半ぶりの低水準となった。8月は2.7%に上昇した。
MASは、コロナ禍や地政学不安が広がった21年10月から22年10月にかけて、政策引き締めを5回実施した。以降は政策を維持し、今回で6回連続となる。
キャピタル・エコノミクスのタンドン氏は、世界的に需要が鈍化する中、製造業主導の成長に陰りが見え、MASの対応が求められるとし、「金融政策は歴史的に見て非常にタイトだ。MASのインフレに対する懸念は後退しているように思われ、来年1月に政策緩和すると予想する」と述べた。