焦点:グローバル投資家、中国株への見方好転 長期投資家は様子見も
グローバル投資家が中国株式市場への投資再開に備えている。中国政府が景気をてこ入れし、株式市場への長期的な関心を復活させる対策に本腰を入れ始め、市場心理が大きく好転した形だ。写真はハンセン指数の株価ボード。昨年3月、香港で撮影(2024年 ロイター/Tyrone Siu)
Naomi Rovnick
[ロンドン 1日 ロイター] - グローバル投資家が中国株式市場への投資再開に備えている。中国政府が景気をてこ入れし、株式市場への長期的な関心を復活させる対策に本腰を入れ始め、市場心理が大きく好転した形だ。
ムード好転からまだ日が浅く、近い将来に中国が高成長に転じると予想している投資家はほとんどいない。しかし大手機関投資家に話を聞いたところ、株式投資を喚起し、個人消費を押し上げようとする中国政府の取り組みにより、割安な中国株の魅力は増した様子だ。
Abrdnの新興国市場ポートフォリオマネジャー、ガブリエル・サックス氏は「極めて慎重に臨むつもりではあるが、総じて見れば下振れリスクより上振れリスクの方が大きいと感じている」と述べた。
同社は先週、中国株に「選別的な」買いを入れ、現在は中国政府がさらに詳しい政策内容を発表するのを待っている。
9月の中国の製造業購買担当者景気指数(PMI)は、景況拡大と縮小の分かれ目となる50を5カ月連続で下回り、サービス部門PMIも急低下した。このため政府が今年の成長目標5%を達成するには、さらに早急な対策が必要かもしれない。
<機関投資家は様子見>
先週は政府が珍しく直球の景気刺激策を打ち出したため、中国株が急上昇した。ゴールドマン・サックスのストラテジスト、スコット・ラブナー氏が顧客に送ったデータによると、株価を押し上げたのはヘッジファンドで、長期投資を手がける機関投資家はおおむね様子見姿勢を維持した。
ラブナー氏によると、8月下旬時点でミューチュアルファンドによる中国株保有はポートフォリオの5.1%と、10年ぶりの低水準まで縮小していた。
中国では近年、不動産債務の拡大を阻止する習近平国家主席の措置が不動産危機を招き、それが中国の消費者信頼感に打撃を与えた。米中関係の緊張も高まっている。
しかし当局が5%の成長目標達成に必要な財政支出を約束したことで、潮目は変わったと投資家は言う。当局は住宅購入制限を一部緩和し、銀行貸出金利を引き下げ、ブローカーには株式購入資金を低コストで提供すると発表した。
アルテミス・ファンド・マネジャーズのナターシャ・エブテハジ氏は「中国株のバリュエーションと、政策好転というテーマの間に著しいかい離がある」と述べ、ここ数日間で中国銘柄を買い増すとともに、新たな銘柄をポジションに加えたと説明した。
<急騰>
中国株は9月30日に急騰し、2008年以来で最大の上昇率を記録した。しかし投資家は、これほど目覚ましい短期的な急上昇が再び起こるとは期待していない。
フィデリティ・インターナショナルのポートフォリオマネジャー、ジョージ・エフスタットホプロス氏は「これはテクニカルな、流動性主導の上昇だ」と述べ、空売り筋の買い戻しが一因だったとの見方を示した。
Abrdnのサックス氏も「大量のショートカバーが入ったのだろう。多くのヘッジファンドが目先のリターン目当てで飛び込んだのだろう」と語った。
リッパーによると、中国株ファンドは年初からこれまでに14億ドルの売り越しとなり、昨年1年間の流入分が相殺された。
エフスタットホプロス氏は、消費者信頼感が向上するまで中国株の買い増しは控えると言う。
一方、ヘッジファンドであるトスカファンド・ホンコンのマーク・ティンカー最高投資責任者は直近の中国政府の対策について、不動産もしくはインフラのブームを通じて手早く成長を追求するのではなく、持続的な家計需要を構築する姿勢かもしれないと指摘。「経済を不安定にさせるレバレッジを奨励するのであれば、5%成長を達成しても価値はない」と語った。
ピクテ・アセット・マネジメントのチーフストラテジスト、ルカ・パオリーニー氏は、米国の利下げが世界的な需要と中国の輸出を押し上げるという側面が見落とされているのではないかと指摘、「顧客には今週、中国株を持っていないなら、ある程度ポジションに加えた方がいいと告げている」と明かした。
KBIグローバル・インベスターズのノエル・オハロラン最高投資責任者は、割安感に基づいて夏に中国株を買い始めており、まだ利益は確定していない。「多くの人々は中国株への投資配分を変えるのは時期尚早だと考えているが、私は中国株の向かう方向は上しかないと思う」とオハロラン氏は語った。