ニュース速報
ワールド

北朝鮮、韓国に向け数百個の汚物風船 金与正氏「誠意の贈り物」

2024年05月30日(木)00時48分

韓国は29日、北朝鮮が大量の風船でごみや汚物とみられるものを韓国側に飛ばしたと非難した。写真は北朝鮮からとみられる風船。韓国・鉄原郡で29日撮影。提供写真。(2024年 ロイター/Yonhap via REUTERS/File photo)

Jack Kim

[ソウル 29日 ロイター] - 北朝鮮は29日、韓国領内に向けてごみや汚物とみられるものを詰め込んだ風船数百個を飛ばした。韓国側は卑劣かつ危険な行為だと激しく反発している。

韓国軍合同参謀本部は29日午後までに260個以上の風船が確認され、大半が地面に落ちたと発表した。落下物を検査・回収するため軍の爆発物処理班と化学・生物兵器対応チームが出動したほか、住民には近づかないよう注意が呼びかけられた。

大統領府の当局者は記者団に「北朝鮮はごみや雑多な物を風船の中に詰め込むことで、韓国の国民がどう反応するか、政府が混乱するかを試したいようだ。直接的な挑発とは別に、心理戦や小規模で複雑な脅威がどのような結果になるか探ろうとしている」と語った。その上で冷静に対処する考えを示した。

韓国の脱北者団体は北朝鮮体制を批判するビラのほか、食料、医薬品、現金、Kポップのミュージックビデオやドラマが入ったUSBなどを風船で定期的に北朝鮮に飛ばしており、南北間の緊張につながっている。

北朝鮮は、今回の風船は韓国の脱北者や活動家による継続的なプロパガンダ活動に対する報復だと主張。

金正恩朝鮮労働党総書記の妹で党の有力幹部でもある金与正氏は、国営の朝鮮中央通信(KCNA)を通じて声明を発表し、国民の表現の自由を主張しながら風船を批判する韓国政府について「恥ずべき、厚かましい」行為と激しく非難した。

風船は「表現の自由を求めて叫ぶ韓国国民への誠意の贈り物」だとし、韓国が北朝鮮領内に送ったとされる数の数十倍もの風船を送ると明言した。

韓国大統領府の当局者は冷静に対応すると明言した。

韓国軍が29日に公開した写真にはビニール袋がくくりつけられた風船が写っている。割れた風船の周りにごみが散乱している様子もあり、袋に「排せつ物」と書かれているのが確認できる。

北朝鮮の国防次官は週末の談話で、「強力な自衛力」を行使すると表明。韓国の団体のビラ散布に対抗すると警告していた。

東亜日報が政府筋の話として報じたところによると、北朝鮮は29日早朝に韓国でGPS信号の妨害も試みた。被害は報告されていないという。

韓国のシンクタンク、世宗研究所のピーター・ワード氏は軍事行動を起こすことに比べて、風船を送ることははるかにリスクが低いと指摘。「こうしたグレーゾーン戦術は、民間人には不快だが対抗が難しく、軍事的にエスカレートして制御不能になるよりもリスクは小さい」と述べた。

ロイター
Copyright (C) 2024 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

焦点:アサド氏逃亡劇の内幕、現金や機密情報を秘密裏

ワールド

米、クリミアのロシア領認定の用意 ウクライナ和平で

ワールド

トランプ氏、ウクライナ和平仲介撤退の可能性明言 進

ビジネス

トランプ氏が解任「検討中」とNEC委員長、強まるF
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 2
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はどこ? ついに首位交代!
  • 3
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 4
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 5
    「2つの顔」を持つ白色矮星を新たに発見!磁場が作る…
  • 6
    300マイル走破で足がこうなる...ウルトラランナーの…
  • 7
    今のアメリカは「文革期の中国」と同じ...中国人すら…
  • 8
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 9
    トランプ関税 90日後の世界──不透明な中でも見えてき…
  • 10
    米経済への悪影響も大きい「トランプ関税」...なぜ、…
  • 1
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 3
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 4
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 5
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 6
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇…
  • 7
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 10
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 8
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中