アングル:韓国中銀により大幅な利下げの圧力、トランプ関税で景気後退リスク

4月9日、 韓国銀行(中央銀行)は従来の想定よりも前倒しで、かつ大幅な利下げを迫られるかもしれない。ソウルの同銀前2016年7月撮影(2025年 ロイター/Kim Hong-Ji)
[ソウル 9日 ロイター] - 韓国銀行(中央銀行)は従来の想定よりも前倒しで、かつ大幅な利下げを迫られるかもしれない。トランプ米政権が仕掛けた貿易戦争の激化により、景気後退突入リスクが出てきたからだ。
つい最近まで韓国銀行は第2・四半期と第3・四半期に1回ずつという、年内あと2回の利下げが予想されていた。
しかし足元の世界的な金融市場のメルトダウンと米関税政策に起因する今後の見通しの劇的な変化を受け、韓国銀行は早ければ来週17日の会合で利下げする可能性が浮上している。
シティの調査部門は7日、次の利下げ時期の予想を5月29日から来週17日に修正。INGも4日、利下げ時期を5月から来週に変更するかもしれないと述べた。
アジア・太平洋地域では中銀の政策運営の軸足がインフレないし通貨安定から景気支援に移行しつつあり、フィリピンやシンガポールなどの中銀も向こう1週間で金融緩和に動くと見込まれている。
韓国銀行の考えに詳しい関係者の1人は、トランプ米大統領が先週発表した包括的な関税措置や5月に韓国銀行が四半期見通しを改定することに触れた上で「われわれは25%の(韓国に対する米国の相互)関税に起因する今年の経済成長の下振れリスクを検証しているところだ。この検証作業次第で、利下げペースを調整する可能性がある」と明かした。
米国が韓国に適用する相互関税の25%は、同盟国中では最も高い部類になる。崔相穆企画財政相は8日、ベトナムなどに生産拠点を置く企業を含めて韓国の輸出業者に「甚大な打撃」を与えると懸念を示した。
しかも韓国では尹錫悦氏の大統領罷免により、政治的な空白も生まれている。
韓国銀行は昨年10月に15年ぶりの高水準だった政策金利の引き下げを開始。今年2月までに3回の利下げを行ってきた。
2月には今年の経済成長率見通しを1.9%から1.5%に下方修正したが、さらに引き下げると予想されている。
こうした中でエコノミストの意見は、米関税政策とそれに伴う市場混乱のため、韓国銀行がより大幅な利下げに踏み切る余地が開かれたのではないかという点で一致する。
シティ調査部門のエコノミスト、キム・ジンウク氏は「米関税ショックが経済成長と物価上昇率に及ぼすマイナスの影響を見積もると、より急速な利下げサイクルが見えてくる」と述べた。同氏は2026年末までに政策金利は現在の2.75%から1.25%まで低下し、この間25ベーシスポイント(bp)幅で6回利下げがあると想定している。