ECB専務理事、米決済業者依存は経済的威圧リスクと警鐘

欧州中央銀行(ECB)のレーン専務理事兼主任エコノミストは20日、欧州が米国の決済サービス業者に依存している状況は欧州経済が威圧される事態につながる恐れがあると警鐘を鳴らした。写真はレーン氏。ロンドンで2024年6月に撮影(2025年 ロイター/Anna Gordon)
[フランクフルト 20日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)のレーン専務理事兼主任エコノミストは20日、欧州が米国の決済サービス業者に依存している状況は欧州経済が威圧される事態につながる恐れがあると警鐘を鳴らした。
レーン氏はアイルランド南部コークでの講演で、欧州連合(EU)と米国の関係悪化に付随する主要なリスクについて説明。トランプ米大統領がEUは米国を「ねじ伏せるために結成」されたと述べて報復措置を講じると表明して以降、EUは米国との関係見直しを進めている。
特に懸念されるのは現在、ユーロ圏のカード決済の約3分の2をビザとマスターカードの米国勢が処理している上、アップルペイやグーグルペイ、ペイパルといった米ハイテク企業系の決済手段が小売りセクターの取引でかなりの比率を占めている事態だ。
レーン氏は「欧州の外国決済サービス業者への依存度は際だった水準に達した」と指摘。「この依存状態により、欧州は経済的圧力や威圧のリスクにさらされ、われわれの戦略的自治に影響が及び、金融インフラの極めて重要な面を掌握する能力が制限される」と述べた。
また同氏は「世界的に金融システムの多極化が進む中、決済システムと通貨は地政学的な影響力を行使する手段としての意味合いが強まっている」と語った。
レーン氏によると、ユーロ圏20カ国のうち13カ国で自国のカード決済制度が完全に国際的なカード決済制度に置き換えられており、これによってECBがデジタル通貨発行へ向けた取り組みを進めることが急務となった。
同氏は「デジタルユーロはこうしたリスクに対処する有望な解決策であり、ユーロ圏が自ら金融の将来を握り続けることを確実にするものだ」と強調した。