中国ファンド業界にAI旋風、開発・導入加速 運用成績向上競う

3月14日、中国のヘッジファンド業界に人工知能(AI)旋風が巻き起こっている。写真はAIのイメージ。2024年2月撮影(2025年 ロイター/Dado Ruvic)
Samuel Shen Vidya Ranganathan
[上海/シンガポール 14日 ロイター] - 中国のヘッジファンド業界に人工知能(AI)旋風が巻き起こっている。先駆けは、生成AIのメッカとも言える米国をはじめ世界を驚かせたディープシークを傘下に置くクオンツファンド「ハイフライヤー(幻方量化)」だ。業界ではAIの研究・導入の動きが活発化し、各社はAIによってより高い運用成績を目指している。
中国ヘッジファンド業界では、Baiont Quant(倍漾量化)、Wizard Quant(寛徳量化)、Mingshi Investment Management(鳴石投資管理)などがAI研究を強化。投資信託会社の間では業務にディープシークを活用する動きが広がる。
Baiont Quantでは、機械学習を活用し人間の介入なしに市場取引を行っている。Feng Ji最高経営責任者(CEO)は「2年前、AIを活用するわれわれは、同業者からあざけりを受けたり怪しい目で見られた。そういう同業も今やAIを受け入れなければ退場を迫られる可能性がある」とし、「われわれはAI革命という台風の目にいる」と語った。
大半のファンドは、市場データの処理や、投資家のリスク性向に基づく取引シグナルの生成にAIを活用している。中国でクオンツ運用のヘッジファンドが増えるにつれて、市場平均を上回るパフォーマンスに向けた競争も激しくなることが予想される。
Wizard Quantは先月、「科学技術の未来を再構築する」研究所のためにAI研究者やエンジニアの求人広告を出した。
コーディング人材の需要も高まっている。Mingshiは、傘下のジェネシスAIラボが研究と投資をサポートするコンピューターサイエンティストを採用していると明らかにした。
地方政府は支援の方針を示す。南部の深セン政府は、ヘッジファンドのAI開発の助成に向け45億元(6億2075万ドル)調達する計画だ。
<単調業務はAIに>
中国投資信託業界では、20社以上がディープシークを導入。
オープンソースで低コストのディープシークは「投資信託業界でAIアプリケーションのハードルを大幅に下げた」と浙商基金管理の幹部は語る。
浙商基金では、研究と投資の効率を高めるためディープシークをAIプラットフォームに組み込み、AIエージェントを開発している。市場シグナルの監視や日次コメントの作成など、現在ジュニアアナリストがやる仕事の大半をAIに任せ「人間にはより創造的なことをさせる」(同幹部)という。
FinAIリサーチのプリンシパルアナリスト、ラリー・カオ氏は「ディープシークが登場する前は、AIはコスト、人材、技術的要件から主にトップクラスのプレーヤーの領域」だったが、ディープシークは「(米国の同業に比べ規模の小さい)中国のファンドマネージャーが同じ土俵で競える機会を提供した」と指摘した。
BaiontのFeng氏も、AIの急速な進歩は、ファンド業界の後発参入者が既存の大手に太刀打ちすることを可能にするとみる。「経験豊富なファンドマネージャーとは20年の経験を持つような人のことをいうのだろうが、その経験をAIなら1000個のGPUを使って2カ月で習得できる」と語った。