連合の春闘賃上げ率、前年超え5.46% 会長「新ステージ定着に好発進」

3月14日、合が14日発表した2025年春闘の1次集計によると、基本給を底上げするベースアップ(ベア)と定期昇給(定昇)を合わせた賃上げ率は加重平均で5.46%となった。都内で2023年11月撮影(2025年 ロイター/Issei Kato)
Kentaro Sugiyama Makiko Yamazaki
[東京 14日 ロイター] - 連合が14日発表した2025年春闘の1次集計によると、基本給を底上げするベースアップ(ベア)と定期昇給(定昇)を合わせた賃上げ率は、加重平均で5.46%と前年同時期に比べて0.18ポイント上昇した。2年連続で5%を超え、1991年以来34年ぶりの高水準となった。会見した芳野友子会長は「新たなステージの定着に向けて良いスタートが切れた」と評価した。
集計は同日午前10時時点。「平均賃金方式」で回答を引き出した760組合の賃上げ率は、加重平均で1万7828円・5.46%だった。ベアを実施したことが明確な649組合のベア分は1万2571円・3.84%で、この集計を開始した2015年以降、最も高くなった。芳野会長は「賃上げは1年で終わるものではない。来年、再来年と賃上げの流れを巡行軌道に乗せていきたい」と語った。
300人未満の中小組合351組合の賃上げ率は、加重平均で5.09%。前年同時期に比べて0.67ポイント上昇した。芳野会長は「第1回目の集計で5%を超えたが、気を緩めずに最後までサポートしていきたい」と述べ、労務費を含む価格転嫁の運動をさらに強化していく考えを示した。
連合が事前に取りまとめた要求(定昇分含む)は加重平均6.09%と93年(7.15%)以32年ぶりの高水準、企業規模間の格差是正を目指す中小組合では6.57%と94年(6.67%)以来の高水準だった。
<消費は上向くか>
大手企業の多くが組合要求に回答した12日の集中回答日では、相場形成のけん引役が期待されるトヨタ自動車をはじめ、各社から満額回答が相次いだ。経団連の十倉雅和会長は「賃金引上げの力強いモメンタム『定着』への着実な一歩を踏み出した」とコメント。石破茂首相も「『賃上げと投資がけん引する成長型経済』の実現に向けた機運が高まり、官民の連携が実を結んできている」と自信を示した。
もっとも、24年春闘も賃上げ率は33年ぶりの高水準となる5.1%で着地したものの、長引くインフレの影響で実質賃金はマイナスとなることが多かった。政府や労使が目指す経済の好循環を実現するには、実質賃金がプラスで安定し消費が上向くかが焦点となる。
厚生労働省が10日に公表した1月の毎月勤労統計速報によると、実質賃金は前年比1.8%減と3カ月ぶりに減少した。名目賃金は伸びたものの、生鮮食品の価格高騰やコメ価格の高止まりなど物価上昇圧力が強かった。
三菱UFJリサーチ&コンサルティングの小林真一郎主席研究員は、これまで賃金が上がっても消費に回らなかったのは、物価高の影響で節約志向が強まっていたためだとし、「この先、消費マインドが改善するには、コメや生鮮食品など身近なものの値段が下がるかどうかが重要だ」と話す。
賃金動向とは別に、今年は為替円安が修正されてきたことや、トランプ米政権の政策不透明感で株高に一服感が出てきたことが逆風になりかねないとの見方もある。大和証券の末広徹チーフエコノミストは「これまで株高の恩恵を受けた人の資産効果もあったが、それが剝落してくる。その分、消費が弱くなる可能性がある」と指摘。物価が落ち着いて実質賃金がプラスになっても、それ以外のマイナス要因が多ければ消費は思うように上向かないとの見方を示した。