円安・物価高が消費下押し、食品高騰影響か=内閣府・日本経済リポート
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2月12日、内閣府は、日本経済の現状と課題に関する分析をまとめた日本経済リポートを公表した。写真は、フードコートの魚売り場。2023年8月、福島県相馬市で撮影(2025年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)
[東京 12日 ロイター] - 内閣府は12日、日本経済の現状と課題に関する分析をまとめた日本経済リポートを公表した。足元の円安・物価高が消費低迷の一因となっている可能性などについて解説した。実質賃金のプラス転換を実現する上で、所定外給与の伸び悩みなどリスク要因についても考察を示している。
リポートは、2024年の春季労使交渉が33年ぶりの高水準の賃上げで決着したにもかかわらず、個人消費の伸びが所得よりも緩やかなものにとどまっており、貯蓄率が上昇(平均消費性向が低下)している点を取り上げている。
<賃上げ一時的との認識も消費下押しか>
なかでも「勤労者世帯の平均消費性向は、2010年代前半以降、総じて低下傾向」にあり、背景として、(1)(収入が多い)共働き世帯の増加・(ローン返済は消費に含まれないため)持ち家比率上昇による家賃支払い世帯の減少、(2)賃金や所得の増加が、恒常的な所得の増加ではなく一時的な増加と認識された可能性、(3)食品などの身近な品目の価格上昇による消費者マインドの下押し、(4)いわゆる長生きリスクなど老後に対する不安の高まり─などを挙げている。
とりわけ「家計の予想物価上昇率が、近年、従来より高い水準に上昇しており、22年以降、今後の支出を考える際の最大の要素が『今後の物価動向』になった」として、物価上昇が消費を下押ししている可能性を指摘している。
<家計物価見通しは5%>
なかでも今後の中長期的な物価見通しについて「企業は2%程度に安定化し、市場参加者も2%に近づいている」一方、家計の物価見通しが5%程度に上振れている点を指摘。日銀の「生活意識に関するアンケート調査」によると「中長期的な5年後の予想物価上昇率が、2010年代は、平均値4%程度、中央値2%程度で推移していたが、今回の物価上昇局面においては、平均値8-9%程度、中央値5%程度と水準がレベルシフトしている」と指摘した。
消費者物価指数(CPI)上昇率は「23年11月以降おおむね2%台で推移してきた」が、「食料品価格は24年夏ごろから上昇。円安志向の影響のほか、物流費や人件費の転嫁も影響。物流費10%の上昇は、物価全体を0.2%程度押し上げている」と分析している。
政府は物価上昇を上回る賃上げの早期実現を目指しており、今回のリポートも「パート時給では実質賃金が23年7月以降前年比プラスを継続している」と指摘。一方、フルタイム労働者の実質賃金は22年以降マイナス傾向を脱却できていない。
実質賃金低迷の一因である所定外給与の伸び悩みについて、「製造業は、一部自動車メーカーの認証不正問題の影響もあって、24年前半にかけて減少している」ほか、建設業や運輸・郵便業において、時間外労働規制の強化による「24年問題」の影響によって減少傾向にあると分析した。25年は「こうした一部業種への影響は一巡すると考えられるが、働き方改革の推進の下で、所定外労働時間が構造的に増加していく環境にはないことから、当面、所定外給与の伸びは、所定内給与の伸びの範囲で推移していく」と慎重な見通しを示している。