焦点:ホンダ案に日産衝撃、子会社化「論外」 危機感の溝埋まらず
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生き残りを賭けて経営統合を目指したホンダと日産自動車は、両社がそれぞれ抱える危機感の差を埋められなかった。写真は日産自の内田誠社長。2024年12月、ホンダとの共同会見で撮影(2025年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)
Maki Shiraki Daniel Leussink Norihiko Shirouzu
[東京 12日 ロイター] - 生き残りを賭けて経営統合を目指したホンダと日産自動車は、両社がそれぞれ抱える危機感の差を埋められなかった。ホンダの目には日産の再生計画が「甘い」と映り、子会社化案を突きつけられて社内に衝撃が走った日産は、ホンダのやり方を「論外」とはねつけた。数年前まで規模で勝っていた日産は、ホンダ優位で進む交渉を受け入れられず、世界4位の販売台数になるはずだった統合計画は幻に終わった。
<子会社化「冗談にしか聞こえない」>
日産の取締役会が統合交渉を白紙に戻す方針を固める2週間以上前の1月中旬。同社関係者は破談の予兆をすでに感じ取っていた。内田誠社長の様子から「交渉はうまくいっていない、話をまとめるのは厳しいと思った」と振り返る。
別の日産関係者によると、両社は1月末をめどに発表する予定にしていた統合の可能性についての方向性を見い出すため、週2回のペースで話し合いを重ねていた。業績が悪化している日産が示した人員・生産能力の削減などの再生計画は踏み込みが甘く、ホンダは納得できずにいた。
複数の関係者によると、日産は工場閉鎖には消極的だったといい、閉鎖した場合に生じる決算上の減損損失を避けたがっていたと関係者の1人は話す。
ホンダ関係者は「実効性を感じられるような再生計画は出てこないし、持ち株会社の統合比率の算出も対等意識が強く平行線だった」と語る。株式時価総額から算定した統合比率は5対1だったが、算出する対象期間などを巡り意見がまとまらなかった。
別の関係者の話では、ホンダは仏ルノーにも接触し、同社が保有する日産株の扱いについて議論した。だが、ホンダが提示した条件はルノーが受け入れられるものではなかった。
ホンダは、当初計画していた持ち株会社方式での統合では経営のスピードが上がらないと判断。日産が福岡県北九州市で電池工場の新設計画を発表し、同拠点の生産能力を削減しない方針を示した翌1月23日、日産に子会社化案を打診した。しかし、内田社長が「どちらが上、下ではなく」と昨年12月の会見で述べた通り、対等の関係で統合を想定していた日産社内では突然の提案に反発が広がった。
「日産にホンダの子会社になれと提案するなど到底受け入れられない。全く論外だ」と日産関係者は語り、「日本最古の自動車メーカー(の1つ)が、ホンダの完全子会社になるなんて冗談にしか聞こえない」と憤った。
当初の持ち株会社方式による統合の協議に戻せないかとの意見もあったが、日産が2月5日に開いた取締役会では、子会社化案への反対が強く、交渉自体を白紙に戻す方針を確認した。翌6日に内田社長がホンダ本社を訪れ、取締役会の総意をホンダの三部敏宏社長に伝えた。
ロイターはホンダと日産に交渉過程についてコメントを求めた。ホンダ広報は「当社が発表したものではない」とし、日産広報は「憶測に対してはコメントしない」とした。ルノーは、協議の詳細は知らされていないとする一方、自社の利益を「断固として守る」とコメントした。
<4つの拠点>
ホンダと日産が経営統合協議入りを発表したのは、昨年12月23日。持ち株会社の下に両社が入る形で統合の検討を開始し、今年6月には最終合意を目指す予定だった。日産の内田社長とともに会見したホンダの三部社長は「自立した2社でなければ経営統合の成就はない」と明言、日産の再生計画の実行が「統合の絶対条件」と強調した。
日産は昨年11月の決算会見で、人員9000人と生産能力2割の削減を表明したが、2カ月以上が経った1月22日、北九州市内に電気自動車(EV)向け電池工場の建設計画を発表した。地元首長も参加した式典で会見した坂本秀行副社長は、九州地域で生産能力を削減することはないと明言した。
九州だけでなく、米国のスマーナ、メキシコのアグアスカリエンテス、英国のサンダーランドの工場は「EV戦略を進める上で譲れない。閉鎖するような計画にはなっていない」と関係者は話す。
米国はスマーナを含めて3工場で人員を削減するが、いずれも解雇ではなく希望者による早期退職を4月から募る。別の関係者によると、東南アジア最大の拠点タイでは25年秋までに約1000人減らす予定だが、配置転換を含む数字で純粋な削減数ではない。
日産の年間生産能力は約500万台。これを26年までに足元の販売台数と同水準の350万台まで落とす。昨年11月に削減計画を発表した際、坂本副社長は工場を閉鎖せず、ラインの速度を落としたり、老朽化したラインを併存する新鋭ラインに統合するなどして達成すると説明していた。日産は世界に25の生産ラインを持つが、関係者によると、ホンダとの統合協議を始めた12月中旬以降も方針は変わらなかった。
日産とホンダの関係者によれば、日産はいずれ増産する可能性に備えているという。しかし、日産は売れる車がラインアップに少ない。トヨタ自動車やホンダと異なり、日産は世界2位の自動車市場の北米で需要が拡大しているハイブリッド車を投入できておらず、EV人気が高い最大市場の中国でも現地メーカーに押されている。
英調査会社ペルハム・スミサーズ・アソシエーツの自動車産業アナリスト、ジュリー・ブート氏は「これは(日産の)マネジメントの問題だ」と指摘。「彼らは自分の立場やブランド価値、そして事業を立て直す能力を完全に過大評価している」と話す。
一方のホンダも決して安泰ではない。堅調な業績は二輪事業が下支えしており、年間の営業利益率は10%以上の二輪に比べ、四輪は5%未満と低水準のまま。特にこれまで稼ぎ頭だった中国で販売が低迷している構図は日産と同じだ。
だが、ホンダは中国の生産能力を今期中に146万台から96万台まで削減する。また、同社関係者によれば、中国だけでも2年弱で1万人近くを削減しており、ホンダよりも業績の悪い日産の再生計画が「26年度までに世界で9000人削減」にとどまることを疑問視する。
<「ホンダには幸運」>
日本で初めて国産乗用車を手掛けた「快進社」をルーツとする日産、第2次世界大戦後に自転車用補助エンジンの町工場として始まったホンダは、そもそも企業文化が違いすぎてなじまない――。両社の関係者らはそうみている。日産はトヨタ自動車と並ぶ日本の2大自動車メーカーとして長らく国内市場を中心に成長してきたが、早くから米国に活路を求めたホンダが今では販売台数で上回る。
「ホンダが日産との統合を検討したのは戦略的に大きな間違いだった」。日本株投資に助言するアシンメトリック・アドバイザーズのアミール・アンバーザデ氏は言う。「日産が子会社化案を拒否したのは、ホンダにとって幸運だった。ホンダは先の見えない統合協議から無傷で逃れられた」と語る。
両社は13日に24年4━12月期決算発表を予定する。同日に開く取締役会で統合協議の打ち切りを正式に決める見通しだ。両社とも決算会見で理由や今後の方針を説明する必要があり、とりわけ日産には事業再生計画の実効性を具体的に示すことが求められる。
日産関係者らは、テクノロジー企業などの自動車メーカー以外も含めた新たなパートナー探しの可能性に言及している。日産に関心を示している鴻海精密工業との協業を検討することも排除していない。
「これから誰と組むにしても、まずはリストラ。ターンアラウンド(再生計画)で膿を出すのが先決だ」と日産関係者は話す。「子会社化されなくてよかったが、客観的に見れば、今の日産がいかに駄目かが浮き彫りになった」。
(白木真紀、Daniel Leussink、白水徳彦 編集:久保信博)
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