FRB「利下げ急がず」、関税の影響に適切に対応 議長が議会証言

米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は11日、上院銀行委員会で証言し、利下げを急ぐ必要はないと再表明した。2024年11月撮影(2025年 ロイター/Ann Saphir)
[ワシントン 11日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は11日、上院銀行委員会で証言し、利下げを急ぐ必要はないと再表明した。経済は「総じて堅調」で失業率は低く、インフレはFRBの目標である2%を依然上回っていると述べた。
今回の議会証言は1月のトランプ政権発足後初めて。パウエル議長は証言の冒頭、過去2年間で目標に向けて「大きく前進した」としつつも、インフレはなお目標を0.5%超上回っていると指摘。「政策スタンスの調整を急ぐ必要はない。政策の制約を過度に速く、もしくは過度に大幅に緩和すれば、インフレを巡る進展が妨げられる可能性がある」という見解を改めて示した。
また、物価安定と最大雇用という「二大責務双方に対するリスクに注意を払っている」とした上で、「われわれが直面するリスクと不確実性に対応する上で政策は十分に適切」とした。
FRBは昨年9月から12月にかけて3会合連続で合計1%ポイントの利下げを実施した後、1月の会合で金利据え置きを決定。今後の利下げ時期についてはほとんど手掛かりを与えず、トランプ政権の政策を見極めていく姿勢を示したが、パウエル議長のこの日の発言は、1月会合時の内容を踏襲するものだった。
<関税の影響に「思慮深く適切に対応」>
トランプ大統領は就任以降、主要貿易相手国のメキシコとカナダに対する関税措置を表明した後に発動を延期したほか、10日には鉄鋼・アルミニウム製品に対する25%の追加関税を適用する大統領令に署名。FRB当局者にとって具体的な分析やモデル化を行うための材料が乏しい状況が続いている。
パウエル氏は質疑応答で、「自由貿易に関する標準的な考え方は論理的に今でも意味をなしている」と述べると同時に、「関税政策について判断やコメントを行うことはFRBが果たすべき役割ではない」と言及。「われわれはその影響に対し思慮深く適切に対応する役割を担っている」とし、「関税、移民、財政、規制などを巡る全ての政策が複合的に絡み合っている。これらを理解するよう努めていく」と述べた。
また、物価上昇は起こり得るとしながらも、どの財にどの程度の関税がかけられるかに大きく左右されるとし、「消費者への影響がほとんど及ばないケースもあれば、大きく及ぶケースもある」と語った。
<市場は年内1回の利下げを予想>
市場はFRBは年内に1回、0.25%ポイントの幅での利下げを実施すると予想。利下げ継続が引き続き見込まれているものの、予想される幅は縮小している。
ネーションワイドのチーフエコノミスト、キャシー・ボストジャンシク氏は、経済の多くの分野で状況が変化していることを踏まえ、今年は下半期に1回のみ利下げが実施されると予想。パウエル議長の証言を受け、「トランプ政権の関税、移民、規制、財政を巡るマクロ経済政策の変更を巡る大きな不確実性を踏まえ、FRBは物価情勢と労働市場の推移を見極めようとしている」と述べた。