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トランプ氏の鉄鋼・アルミ関税、業界に動揺 鉄鋼株下落

2025年02月10日(月)17時20分

 トランプ米大統領が9日、米国に輸入される全ての鉄鋼・アルミニウムへの25%の関税を10日に発表すると明らかにしたことを受けて、業界に動揺が広がっている。写真は、アルミ製錬所で生産されるアルミニウム棒。2024年7月、ロシア・シベリアのクラスノヤルスクで撮影(2025年 ロイター/Alexander Manzyuk)

Hyunjoo Jin Tony Munroe

[ソウル/シンガポール 10日 ロイター] - トランプ米大統領が9日、米国に輸入される全ての鉄鋼・アルミニウムへの25%の関税を10日に発表すると明らかにしたことを受けて、業界に動揺が広がっている。

アジアの鉄鋼メーカーは価格や収益性への影響を懸念。物価上昇や経済活動の縮小につながるとの声も出ている。

米政府と米鉄鋼協会のデータによると、米国への鉄鋼輸出が多いのはカナダ、ブラジル、メキシコ、韓国、ベトナム。アルミはカナダの対米輸出が多い。

韓国の産業通商資源省は10日、ソウルで鉄鋼メーカーと緊急会議を開き、関税の潜在的な影響を最小限に抑える対策について議論したと発表した。

現代製鉄の関係者は、輸出価格の上昇や輸出枠の縮小に懸念を表明。韓国政府は第1次トランプ政権と、年間の鉄鋼輸出枠を2015─17年の平均輸出量の70%とすることに合意している。

現代製鉄は関税の影響に対処するため、米国工場の建設を検討していることを明らかにしている。

10日のソウル株式市場では鉄鋼株が軒並み下落。現代製鉄株は一時2.9%値下がりした。

インドの金属株指数も2.5%下落している。

鉄鉱石先物も下落。トランプ氏の発言を受けてリスクオフムードが広がっている。

<米国の需要減少を予想>

中信建投期貨のアナリストは、価格上昇に伴い、自動車、家電、建設用の鉄鋼需要が米国で減少すると予想。「米国に流入するはずだった鉄鋼が欧州連合(EU)やアジア諸国に振り向けられ、世界の鉄鋼貿易のパターンが変わる」との見方を示した。

ANZ(シドニー)のシニア・コモディティー・ストラテジスト、ダニエル・ハインズ氏は「関税の結果、米国メーカーの仕入れ価格が上がるだろう。米国の輸入依存度は高い。アルミは40─45%、鉄鋼は12─15%だ」と述べた。

Capital.com(メルボルン)のシニア金融市場アナリスト、カイル・ロッダ氏は「関税の影響で世界的な経済活動が落ち込む」と指摘。

サクソ(シンガポール)のチーフ投資ストラテジスト、チャル・チャナナ氏は、需要鈍化で潜在的なインフレへの影響が相殺される可能性もあるとした上で「より懸念されるのは不確実性と世界的な保護主義への傾倒だ」と述べた。

ロイター
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