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利上げに前向きな2委員、米動向など注視で現状維持支持=日銀12月会合要旨

2025年01月29日(水)11時56分

 1月29日、日銀が昨年12月に開いた金融政策決定会合では、2人の委員が早期の利上げに前向きな意見を出しながらも、米国の経済動向を巡る不確実性や市場の不安定化リスクなど理由に金融政策の現状維持を支持していたことが明らかになった。写真は日銀本店。都内で昨年3月撮影(2025 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

Takahiko Wada

[東京 29日 ロイター] - 日銀が昨年12月に開いた金融政策決定会合では、2人の委員が早期の利上げに前向きな意見を出しながらも、米国の経済動向を巡る不確実性や市場の不安定化リスクなど理由に金融政策の現状維持を支持していたことが明らかになった。先行きを見据え、中立金利に関する議論も展開されていた。日銀が29日、決定会合の議事要旨を公表した。

決定会合では賛成多数で政策金利を0.25%で据え置くことを決めた。田村直樹委員が政策金利を0.5%に引き上げる議案を提出し、反対多数で否決された。

1人の委員は「基調的な物価上昇率は着実に底上げされている」と指摘した上で「利上げを判断する局面は近いが、現段階では、米国経済の不確実性が一巡するのを今しばらく注視する辛抱強さも必要だ」と述べた。別の1人の委員は、経済・物価は3月時点の見通しに沿って推移しており「海外経済を巡る不確実性は引き続き高いものの、金融緩和の度合いを調整することができる状況だ」と話す一方で、12月は市場参加者の取引やリスクテイクが低調になり市場が急激に変化しやすいほか、7月の利上げの影響をもう少し見極める必要もあることから「今回の会合では現状維持が適切」との見方を示した。

田村委員とみられる委員は今回会合で政策金利を0.5%程度に引き上げることが望ましいとの見解を示した。経済・物価が見通しに沿って推移する中、物価上振れリスクが膨らんでいることを踏まえると「データやヒアリング情報に基づいてフォワードルッキングに金融緩和の度合いを適時・段階的に調整していくことが、物価の安定を通じた国民経済の健全な発展に資する」と指摘したほか、物価の上振れリスクが顕在化した際に急速に金利を引き上げ、経済に大きなショックを与えることを避けるためにも「現時点で、金融政策のアクセルを少しだけ緩め、必要な場合に急ブレーキを避けつつ減速できるようにすべきだ」と述べた。

日銀は春闘でしっかりとした賃上げが実現することに自信を深め、トランプ米大統領就任直後の市場の反応も落ち着いていたことから、1月23―24日の決定会合で0.5%への利上げを決めた。

<中立金利巡る議論>

12月会合では、先行きの金融政策運営の観点から中立金利についても議論した。

ある委員は「中立金利からまだ距離がある現時点では、適時のタイミングで利上げを行っていくことが望ましい」と述べた。1人の委員は、経済・物価が見通しに沿って推移しているもとで、金融緩和の度合いを調整するタイミングは「目標達成時点に予想される金利水準から見た利上げペースに加え、それぞれの時点での上下双方のリスク要因の評価にも依存する」とした。「経済構造が変化しつつある局面で、過去の長く続いたデフレ期を多く含む経済・物価の実績から推計した中立金利を用いて利上げの時期を決める議論には違和感がある」(別の委員)との指摘も出された。

名目中立金利は、自然利子率に予想物価上昇率を足すことで算出される。1人の委員は、実質金利と自然利子率の関係について、多くのモデルでは実質金利が極めて低い水準にあるにもかかわらず、経済・物価に加速感が見られないことから自然利子率を低めに推計しているが「実際には、予想物価上昇率がサーベイ等が示すほどには高まっておらず、実質金利が見かけほど低くない可能性もある」と指摘。その場合には、自然利子率はさほど低下していないとの見方もできると述べた。この委員は「こうした解釈の違いにより、やや長い目でみた金融政策運営への含意は異なり得る」とした。

<金融機構局、毎回の決定会合に出席へ>

過去四半世紀にわたる経済・物価・金融情勢や金融政策運営を振り返る「多角的レビュー」のとりまとめも行った。

ある委員は、2%の物価安定目標について「2.0%という数値にこだわるのではなく、その背後にあるメカニズムが物価安定目標と整合しているかを見ていくことが望ましい」と述べた。その上で、経済の供給サイドに対する副作用について明確な結論が得られていないことに加え、今後、副作用が遅れて顕在化するなどマイナスの影響が大きくなる可能性があることから「最終的に大規模な金融緩和がプラスの影響をもたらしたと言えるかどうかは、現時点では分からない」と発言した。

1人の委員は、金融仲介活動などの面で、大規模な金融緩和の副作用が遅れて顕在化する可能性には留意が必要とのレビューの結論も踏まえると「今後、金融機構局の担当理事および局長が、展望リポートを決定する年4回の会合以外の決定会合にも出席することが望ましい」との見解を示した。委員は、金融システムの動向にいっそう目配りする観点から、今後、毎回の決定会合に金融機構局の出席を求めることが適当との認識で一致した。

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