日本製鉄が提訴、米大統領のUSスチール買収禁止命令無効など求め
日本製鉄は6日、米鉄鋼大手USスチールの買収に不当介入したとして、米大統領による買収禁止命令や対米外国投資委員会(CFIUS)の審査の無効を求める訴訟など複数の訴訟を提起したと発表した。写真は2019年3月、東京で撮影(2025年 ロイター/Yuka Obayashi)
(見出しを修正して再送します)
Ritsuko Shimizu
[東京/ワシントン 6日 ロイター] - 日本製鉄は6日、米鉄鋼大手USスチールの買収に不当介入があったとして、米大統領の買収禁止命令や対米外国投資委員会(CFIUS)の審査の無効を求める訴訟など複数の訴訟を提起したと発表した。USスチールと共同で提訴した。
日鉄は「買収を完了させるという日本製鉄とUSスチールの変わらぬ決意を示している」とした上で、「この買収がUSスチールの未来を確かなものにするための最善の道であると強く信じており、この目標を達成するために、自らの法的権利を断固として守り抜く」と主張した。
日鉄は7日午前9時から橋本英二会長兼最高経営責任者(CEO)が記者会見を開く。
訴訟は2件で、1つは大統領の命令とCFIUS審査の無効を求める訴訟。米国憲法上の適正手続きのほか、CFIUS審査に関する法定手続要件の違反と違法な政治的介入への異議を申し立てた。日鉄は、バイデン大統領が自身の政治的目的を達成するために法の支配を無視したと主張。これにより、CFIUSも誠実な審査を行わなかったとしており、審査と命令を無効にした上で、法的義務を満たす審査を改めて行うようCFIUSに命じることを求めている。
2つ目は米鉄鋼大手クリーブランド・クリフスと同社CEO(最高経営責任者)のローレンソ・ゴンカルベス氏、全米鉄鋼労働組合(USW)会長のデビッド・マッコール氏に関するもの。買収を阻止してUSスチールの競争力を削ぎ、日鉄が米国製の鉄鋼製品を米国の顧客に提供する能力を損なわせるため、共謀して違法行為に及んだとしている。
日鉄とUSスチールは「米国の国家安全保障の審査制度が、選挙に勝利する目的で政治的な恩恵に報いるために、これほど明白かつ不適切に悪用されたことに失望している」と非難。「米国の法制度は高潔で公平であり、申立てが公平に審理され、公正な結果が得られることを期待し、信じている」とした。
ゴンカルベス氏は6日の声明で「日鉄とUSスチールは自身の失敗から目をそらそうと必死で責任のなすり合いを続けている」などと反論した。
USスチール株はこの日の米国株式市場で急伸し、8.1%高で取引を終えた。
バイデン大統領は2日、安全保障上の懸念を理由に同買収計画の中止を命じた。USWは雇用や安保に影響があるとして一貫して買収に反対を訴えてきた。
日本政府や経団連もバイデン大統領の決定に不満を表明し、理由を明示するよう求めている。
石破茂首相は6日午後の会見で、安保上の懸念を示したバイデン氏の判断理由に疑問を呈し、 米側から「きちんと述べてもらわなければ、これからの話し合いにならない。いかに同盟国であろうと、今後の関係においてその点は非常に重要と考えている」と述べた。
経団連は「今後の対米投資、さらには日米経済関係への影響が憂慮される」とのコメントを発表した[L4N3O20MP]。
これに対し米ホワイトハウス報道官は6日、「国家安全保障と貿易の専門家からなる委員会は、この買収が国家安全保障にリスクを生じさせると判断した。バイデン大統領は、米国の安全保障、インフラ、サプライチェーンの強靭(じん)性を守ることを決してためらわない」と述べた。
またトランプ次期大統領も、自身のソーシャルメディアへの投稿で「関税によってUSスチールはもっと収益性の高い価値ある企業になるのに、なぜ彼らは今、買収されたいのだろうか」と述べた。
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