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アングル:日本株需給に構造変化、想定外の新NISA効果 下値抵抗で存在感

2024年12月18日(水)15時09分

 個人投資家が新NISA(少額投資非課税制度)を通じ、想定以上に日本株の買い手として主力になりつつある。写真は都内の株価ボード。2022年12月撮影(2024年 ロイター/Issei Kato)

Noriyuki Hirata

[東京 18日 ロイター] - 個人投資家が新NISA(少額投資非課税制度)を通じ、想定以上に日本株の買い手として主力になりつつある。東証改革による企業の自社株買いの定着とともに、需給環境の構造変化との受け止めが市場では聞かれ、相場形成における下値抵抗力としての存在感が増してきたとの見方が浮上している。

    <4.3兆円の衝撃>

    「日銀の上場投資信託(ETF)買いというエンジンは火が消えたが、自社株買いのエンジンが強まっていたところに、新NISAという大きなエンジンがもう一つ加わった」とニッセイ基礎研究所の井出真吾チーフ株式ストラテジストはみている。

    新NISAの導入から約1年。モルガン・スタンレーMUFG証券の中澤翔・株式ストラテジストは「今年の最大の嬉しい誤算の一つは、新NISAを通じた家計の日本株投資の増大だ」と指摘する。

    日本証券業協会の集計によると、成長投資枠による日本株買いは10月までに4.3兆円。新NISAを通じた日本株の買付規模を、強気シナリオでも2.4兆円と試算していたモルガン・スタンレーMUFG予想の約2倍に膨らんだ。

    海外株や投資信託などを含む新NISA全体の買付規模は10月までで11兆円。このうち約4割が日本株への投資となっている。月次の口座開設数、買付額の動向をみると、年初の株高局面でNISAマネーが一役買ったことがうかがえる。1ー3月が口座開設数170万件(10月までの累計317万件)、買付額4.6兆円と突出して多く、このうち日本株への投資は2.2兆円で、同期間の海外勢の買い越しと同規模だった。

    今年の新NISAの口座数の急増は、既存の証券口座からの移し替えの影響もあったとみられており、来年は「伸び余地はさほどなさそう」と松井証券の窪田朋一郎シニアマーケットアナリストはみている。買付額が膨らんだことは、旧制度に比べた買付枠拡大の効果も意識されている。「来年以降の新NISAを通じた日本株投資のペースは、今年に比べて落ち着いてくるかもしれない」と、モルガン・スタンレーMUFGはみている。

    一方、年明け以降は、新たに18歳になって制度の利用が可能になった人の口座開設による増加が例年、見込まれる。対象年が変わることで新たな買付枠を得た既存の利用者から、追加投資も見込まれるとして「1月前半は新NISAを通じた資金流入が増えるといった季節性が生じてくるのではないか」(ニッセイ基礎研の井出氏)との指摘もある。

    <自社株買いは過去最大>

    企業による自社株買いも、日本株買いの柱のひとつとなっている。事業法人は7.5兆円の買い越しで、過去最大の買い越しとなり、株価の下支え役を果たした。今年は12月第1週までに海外勢が5.2兆円売り越していながら、日経平均は年初に比べ約6000円高い水準にある。

    自社株買いは、東証の資本コストなどに関する要請への対応もあり「今後さらなるアップサイドが見込まれる」とゴールドマン・サックス(GS)の建部和礼・日本株ストラテジストは予想する。来年も引き続き事業法人が最大の買い主体になるとみている。

    日銀によるETF買い入れの暦年最多は20年の7.1兆円だった。自社株買いを映す事業法人の買い越しはすでにこれを上回っている。新NISAによる日本株買いは、10月までの実績を単純に年換算すると5.2兆円となり、こちらも同水準に接近している。

    <持ち合い解消の受け皿>

    新NISAの買付額は、来年も堅調を維持するとの見方がある。「インフレが継続することで預金から投資への資金の流れが促され、日本株にとって一定程度の下支えになり得る」と松井の窪田氏はみている。インフレ期待が持続的に上昇すれば、資産を現預金で保有することは価値の目減りにつながり、資産防衛のための株買いニーズは強まる。

    日本株の売り主体と想定されるのは生損保や都銀・地銀のほか、国内年金勢が売買を委託する信託銀行だ。銀行・保険会社は政策保有株の売却加速で売り越しが増える可能性があるほか、株高となれば年金基金によるポートフォリオに占める株式の比率を下げるためのリバランス売りが想定される。

    一方、GSは、持ち合い解消が進んでも、大幅に需給が悪化することはないとの考えを示している。背景の一つとして「企業や個人が持ち合い解消の受け皿になるだろう」(建部氏)との見方だ。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)に関しては、年度内に基本ポートフォリオに占める株式比率を引き上げるとの思惑も市場では根強い。

    <調整時の復元力向上にも>

    来年はトランプ次期米大統領による関税引き上げなどのリスクがくすぶるが、新NISAマネーと自社株買いの2本柱が下支えする構図から、日本株は「需給的に下値抵抗力が強いといえる」と、三井住友トラスト・アセットマネジメントの上野裕之チーフストラテジストは指摘する。

    新NISAマネーと自社株買いは共に、積極的に上値を追う性質の資金ではないものの、ニッセイ基礎研の井出氏は「日銀のETF買いに代替する株価下支えの勢力になってきた」とみる。三井住友トラストAMの上野氏は、下値に買いが控えていることは、投資家にとって心理的な安心感になることに加え、投機筋にとっては下値攻めをしにくくなるとして、8月の急落のような株価調整時には「(株価の)復元力を高めそうだ」と話している。

(平田紀之 編集:橋本浩)

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