EUの生産性低迷、背景に国境越える課題 IMFが米と比較研究
11月14日、国際通貨基金(IMF)は1990年代から広がっている欧米の生産性格差について、欧州連合(EU)側に国境を越える課題があるとする研究結果を発表した。写真はIMFのロゴ。2018年9月、ワシントンで撮影(2024年 ロイター/Yuri Gripas)
Jan Strupczewski
[ブリュッセル 14日 ロイター] - 国際通貨基金(IMF)は1990年代から広がっている欧米の生産性格差について、欧州連合(EU)側に国境を越える課題があるとする研究結果を発表した。
購買力平価ベースの1人当たりGDP(域内・国内総生産)を見ると、EUは現在、米国の約72%という。
IMFのアルフレッド・カマー欧州局長は「このギャップの70%は生産性の伸びの低迷によるものだ」と説明。2つの市場規模は同等であるにもかかわらず、欧州の市場は非常に細分化されており、米国には存在しないEU27カ国間の貿易障壁が存在するため、欧州の生産性の伸びは米国よりも遅いと指摘した。
企業はより大きな欧州市場ではなく、国内市場をターゲットにしており、スケールメリットを生かせていないとした。
もしEU諸国間の貿易障壁が米国の州間と同じレベルまで引き下げられれば、欧州の生産性は7%ポイント上昇するとの見方を示した。
第2の課題は資本移動のための統一市場がないことで、EU企業は米国企業に比べて株式発行による資金調達で不利になっており、銀行融資に頼っているという。
EUの生産性の伸びを妨げている3つ目の要因として、域内各国を移動する労働者が州から州へ移動する米国の労働者よりもはるかに大きな障壁に直面しており、住宅も不足していることを挙げた。カマー氏は「欧州のコストは8倍だ」と話す。
同氏はEUのモノとサービスの単一市場を改善する必要性に言及した上で、「良いニュースは問題の解決策の大部分が政策立案者自身の手の中にあるということだ」と語った。