ニュース速報
ビジネス

米金融政策なお制約的とFRB当局者、次期政権など不透明要因

2024年11月13日(水)09時20分

 米連邦準備理事会(FRB)当局者2人は11月12日、米金融政策が労働市場やインフレに引き続きブレーキをかけているとの認識を示した。写真はリッチモンド地区連銀のバーキン総裁。2月8日、ニューヨークで撮影(2024年 ロイター/Brendan McDermid)

[12日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)当局者2人は12日、米金融政策が労働市場やインフレに引き続きブレーキをかけているとの認識を示した。追加利下げの妥当性を主張するものとみられるが、いずれも利下げのペースや程度について判断するのは時期尚早だと示唆した。

ミネアポリス地区連銀のカシュカリ総裁はヤフー・ファイナンスのイベントで「FRBはやや制約的なスタンスを維持していると考えている」とした上で、最終的にどこまで利下げを実施する必要があるかについては、経済に導かれて判断することになると述べた。

リッチモンド地区連銀のバーキン総裁は別のイベントで、政策金利の現行水準について、これまでより「制約の度合いが幾分低い」と指摘。需要が高まり、FRBがインフレ抑制に注力する必要が生じるシナリオの一方、企業が人員削減を開始し、FRBが雇用市場の保護により注力せねばならないシナリオも考えられると述べた。

「経済は現在良好で、金利は最近のピークから低下しているが、同時に歴史的な低水準を上回っており、FRBは経済がどのように展開しても適切に対応できる態勢にある」と語った。

FRBは先週、政策金利を25ベーシスポイント(bp)引き下げ、4.50─4.75%とした。これにより、短期借り入れコストは利下げ開始前と比べて75bp低下した。

FRB当局者の9月時点の予測に基づくと、12月に25bp、来年に25bp幅の利下げが4回行われ、政策金利は3.25─3.50%となる見通しだ。

ただその後、FRBの次の一手を複雑にする可能性のある多くの材料が出てきている。

9月の個人消費支出(PCE)価格指数は前年比上昇率が2.1%と、FRBの物価目標2%に近づいた一方、変動の大きい食品とエネルギーを除いたコアPCE価格指数は高止まりが続いている。

また、月次の就業者数の伸びは鈍化しているものの、失業率は4.1%と歴史的に見て低い水準にある。当局者は労働市場がさらに減速するか、もしくは底堅さが続くか注視しているが、12月17─18日の米連邦公開市場委員会(FOMC)までに発表される雇用統計は1回のみだ。

<新政権が新たな不透明要因>

先週の大統領選で共和党のトランプ氏が勝利したことも新たな不確実性を生み出す。同氏は減税や新たな関税導入、不法移民の大規模強制送還を掲げる。金融市場は総じて、こうした政策による成長加速や利下げの減少を織り込んでいるが、FRB当局者は具体的な政策が明らかになるまで対応は計画できないとしている。

カシュカリ総裁はFRBが12月の会合で利下げを一時停止する理由として何が考えられるかとの質問に対し、経済指標が労働市場の再加速を示すには、12月会合までには時間が足りないと指摘。「見通しがそこまで大きく変化するためにはインフレ面でのサプライズが必要だ」とした上で、「長期的には(金利が)どこに落ち着くかが大きな問いになる」と述べた。

同氏は景気を刺激も抑制もしない中立金利の水準について、おそらく生産性の向上によって以前より高くなっているとの見方を示した。

中立金利が高くなれば、今後の利下げ回数を減らす根拠の一つになり得るが、カシュカリ氏はバーキン総裁と同様に予測は控えた。「現在の金利が中立水準を上回っていることは誰もが同意するだろう」とした上で、「今後1年で中立水準がどこかについて、より多くの情報が得られるだろう」と述べた。

ロイター
Copyright (C) 2024 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ブラジル最高裁前で男が自爆、侵入試みる G20控え

ワールド

米司法長官に保守強硬派ゲーツ下院議員指名へ、トラン

ビジネス

米フロンティア株主、ベライゾンによる買収承認 96

ビジネス

米メタの「スレッズ」、来年初に広告導入=報道
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:またトラ
特集:またトラ
2024年11月19日号(11/12発売)

なぜドナルド・トランプは圧勝で再選したのか。世界と経済と戦争をどう変えるのか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 2
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国」...写真を発見した孫が「衝撃を受けた」理由とは?
  • 3
    NewJeansのミン・ヒジン激怒 「似ている」グループは企画案から瓜二つだった
  • 4
    本当に「怠慢」のせい? ヤンキース・コールがベース…
  • 5
    建物に突き刺さり大爆発...「ロシア軍の自爆型ドロー…
  • 6
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 7
    中国の言う「台湾は中国」は本当か......世界が中国…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    トランプ再選を祝うロシアの国営テレビがなぜ?笑い…
  • 10
    ウクライナ軍ドローン、1000キロ離れたロシア拠点に…
  • 1
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 2
    「歌声が聞こえない」...ライブを台無しにする絶叫ファンはK-POPの「掛け声」に学べ
  • 3
    ウクライナ軍ドローン、1000キロ離れたロシア拠点に突っ込む瞬間映像...カスピ海で初の攻撃
  • 4
    「遮熱・断熱効果が10年持続」 窓ガラス用「次世代…
  • 5
    「トイレにヘビ!」家の便器から現れた侵入者、その…
  • 6
    本当に「怠慢」のせい? ヤンキース・コールがベース…
  • 7
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 8
    後ろの女性がやたらと近い...投票の列に並ぶ男性を困…
  • 9
    海上自衛隊のヘリコプター搭載護衛艦「空母化」、米…
  • 10
    NewJeansのミン・ヒジン激怒 「似ている」グループは企…
  • 1
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 2
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶりに大接近、肉眼でも観測可能
  • 3
    死亡リスクはロシア民族兵の4倍...ロシア軍に参加の北朝鮮兵による「ブリヤート特別大隊」を待つ激戦地
  • 4
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 5
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 6
    大破した車の写真も...FPVドローンから逃げるロシア…
  • 7
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    予算オーバー、目的地に届かず中断...イギリス高速鉄…
  • 10
    韓国著作権団体、ノーベル賞受賞の韓江に教科書掲載料…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中