自動車メーカー、トランプ新政権の関税やEV政策転換に身構え
11月6日、米大統領選で勝利したトランプ前大統領はメキシコやその他の国々からの輸入車に新たな関税を課すとともに、電気自動車(EV)を推進する多くの既存政策を撤回する可能性があり、自動車メーカーは身構えている。写真は電気自動車の充電器。米カリフォルニア州 で昨年10月撮影(2024 ロイター/Mike Blake)
David Shepardson
[ワシントン 6日 ロイター] - 米大統領選で勝利したトランプ前大統領はメキシコやその他の国々からの輸入車に新たな関税を課すとともに、電気自動車(EV)を推進する多くの既存政策を撤回する可能性があり、自動車メーカーは身構えている。業界団体や経営幹部らが明らかにした。
トランプ氏は環境保護局(EPA)と運輸省の自動車関連規則について、就任初日に撤廃に着手する計画を示している。EVの税額控除などの優遇措置については縮小または廃止を検討中だ。
こうした規制変更により、自動車メーカーはより収益性の高いガソリンエンジン搭載のスポーツタイプ多目的車(SUV)やトラックを製造しやすくなる可能性がある一方、数十億ドルに上るEV用電池やEV製造への投資の先行きは不透明になる。
EVのテスラや電池メーカーのLGなどが所属するゼロエミッション輸送協会は6日、トランプ氏と協力する用意があると表明。「今後4年間は、これらの技術が今後何世代にもわたって米国の工場で米国の労働者によって開発、採用されるのを確実にする上で極めて重要だ」と述べた。
テスラ株は6日に15%近く急騰した。イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)とトランプ氏との親密な関係によって同社が恩恵を受けるとの期待からだ。
米トラック協会は同日、EPAの厳しい排出基準を「技術的に達成可能で、我々の重要な産業の運用実態を考慮した」基準に置き換えるようトランプ氏に要請した。
トランプ氏は2019年に行ったのと同様に、カリフォルニア州が独自の自動車排ガス規制を設定する権限を剥奪する見通し。バイデン大統領はこの権限を復活させている。またトランプ氏は数十億ドルに上るEV充電補助金の使い道についても決定する。
トランプ氏は、メキシコからの輸入車に200%以上の関税を課すと繰り返し警告しており、アジアや欧州の自動車にも課税する可能性がある。
中国からの自動車輸入は阻止したい考えだが、米国内で製造する中国自動車メーカーには門戸を開いている。
トランプ氏は8月、ロイターに対し「インセンティブを与えるつもりだ。中国やその他の国々がここに来て自動車を販売したいのであれば、ここで工場を建設し、わが国の労働者を雇用することになるだろう」と語った。
建設地選定会社ストラテジック・デベロップメント・グループのマーク・ウィリアムズ社長は、自社への需要は高まりそうだが、関税はコスト増につながる可能性が高いと指摘。「自動車メーカーに供給する部品や部材の製造システムから中国を排除し、メキシコやその他の国が代替できないのであれば、米国でどこまで対応できるのか分からない。中国が閉め出されれば、これまで以上にメキシコが必要になるだろう」と述べた。
韓国政府高官は6日、トランプ氏が関税の引き上げを実施した場合、自国企業による米国投資が増えるとの見通しを示した。
ホンダの青山真二副社長は、メキシコにおける同社の生産能力は年間約20万台で、その80%が米国市場に輸出されていると説明。米国がメキシコからの輸入車に恒久的な関税を課せば、ホンダは生産拠点の移転を検討せざるを得ないだろうと述べた。
トヨタ自動車はメキシコの2工場でトラック「タコマ」を生産しており、昨年は米国で23万台以上を販売した。
トヨタに近い関係者は、トランプ氏がメキシコからの輸入に高関税を課した場合、同社はタコマなどの生産拠点を米テキサス州サンアントニオに移す可能性があると述べた。トヨタの広報担当者はコメントを控えた。