アングル:FRB当局者、インフレ鈍化に安堵 利下げ時期巡る議論は複雑に
米商務省が28日に発表した5月の個人消費支出(PCE)価格指数が前月比変わらずとなり、米連邦準備理事会(FRB)当局者にとってインフレ鈍化を示唆する心強いデータが示された。2019年3月撮影(2024年 ロイター/Leah Millis/File Photo)
[28日 ロイター] - 米商務省が28日に発表した5月の個人消費支出(PCE)価格指数が前月比変わらずとなり、米連邦準備理事会(FRB)当局者にとってインフレ鈍化を示唆する心強いデータが示された。年初の予想を上回るインフレ指標を受け金融政策がどの程度機能しているのかを巡る懸念が広がっていたが、それが一部和らいだ格好だ。
ただ、前月比でのインフレ鈍化は徐々に明らかになっている一方、前年比での2%目標達成への道のりはまだ遠く、利下げ開始時期を巡る議論を複雑にしている。
米サンフランシスコ地区連銀のデイリー総裁は28日、PCE価格指数の発表を受け、CNBCのインタビューで「(金融政策が)十分に引き締め的であるという証拠が得られている」と言及。「成長は鈍り、消費ペースも鈍化している。労働市場は減速し、インフレ率も下がっている」とし、どこから見ても金融政策が機能していないとは思えないと語った。
もっとも28日に発表されたPCE価格指数はまだ多くの進展が必要であることも示している。前年比の伸びは2.6%と前月の2.7%から鈍化したものの、FRBの目標である2%をなお上回っている。
FRBは昨年7月以降、政策金利の誘導目標レンジを5.25─5.50%で維持。FRBはインフレ率が2%目標に向けた持続可能な軌道に乗っているという確信を政策当局者が深めるまでは、利下げは適切ではないとしている。
5月のPCE価格指数の伸び鈍化を受け、市場ではFRBが9月までに利下げを決定し、12月に追加利下げを実施するとの観測が高まった。フェデラルファンド(FF)金利先物市場が織り込む9月までの利下げの確率は約68%と、64%から上昇した。
ナティクシスのエコノミスト、クリストファー・ホッジ氏は「5月のインフレ率はFRBが安心できる水準を大きく下回り、年初から続いていた一連の高インフレを断ち切った」と述べた。
ただ、利下げへの道のりは遠いかもしれない。
たとえ前月比で伸びが小幅となり、FRBの2%目標達成に沿った内容が示されたとしても、昨年後半のインフレ率が極めて低水準だったため、前年比での改善が実際に見られるのは年末までかかりそうだからだ。
そうなると、FRB当局者は、どの時点の前月比のデータによって利下げ開始時期などを判断すればいいのかという難しい議論を強いられる可能性がある。
次回の連邦公開市場委員会(FOMC)は7月30─31日に開催される。
デイリー総裁はこの日、政策面で取り組むべきことはまだあるとし、インフレ率が2025年末までFRBが目標とする2%を上回る可能性があるという見通しを示した。
ここ最近、FRB当局者の多くは利下げ開始時期に関する明確なコメントを控え、代わりに様々なシナリオに言及している。これまでのところ、FRBが政策金利を据え置いている期間は過去数回よりも長期となっている。
タカ派として知られるボウマンFRB理事は、年内の利下げについて慎重な姿勢を崩していない。
「現在、雇用と労働市場は非常に堅調だが、インフレ目標にはまだ達していない」とし、他の主要中銀が利下げを開始する中でも、FRBは引き続き、目標達成に向けて独自の道筋を歩むと述べた。
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