ニュース速報
ビジネス

仏EV補助金新基準は欧州車優遇、中国メーカーに逆風

2023年12月15日(金)12時22分

 12月14日、電気自動車(EV)購入時の補助金制度を改定したフランス政府は、新基準の導入を15日に控えて対象車種リストを発表した。写真はパリで展示されたEV。2018年10月撮影(2023 ロイター/Benoit Tessier)

Elizabeth Pineau

[パリ 14日 ロイター] - 電気自動車(EV)購入時の補助金制度を改定したフランス政府は14日、新基準の導入を15日に控えて対象車種リストを発表した。製造時の炭素排出量に焦点を当て、中国で製造された車種よりもフランスなどの欧州車を優遇していることから、中国メーカーは大きな逆風になると不満の声を上げた。

適用はフランスで販売されるEV台数の65%に及び、欧米大手ステランティスの24車種とフランス大手ルノーの5車種がリスト入りした。イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が率いる米テスラの「モデルY」も含まれる見通しだ。

中国大手の上海汽車(SAIC)傘下のMGモーターは、フランスのEV事業が悪影響を受けると反発した。世界的に販売に力を入れている「MG4モデル」を購入時補助金の対象車種として申請しないと決めたと明らかにした。ロイターに広報担当者は「販売競争力を完全に失いそうな車種が複数ある。(新基準は)われわれを排除するため編み出された」と述べ、怒りが収まらない。

ルメール経済・財務相は、商品の原材料調達から生産や処分までの間の温暖効果ガス排出量を二酸化炭素(CO2)の数値に換算する「カーボンフットプリント」に言及し、この補助金新制度がもたらす効果に大きな期待を表明した。声明で「われわれはCO2を過剰排出する車の生産にもはや補助金を支給しない」と言い切った。

リストアップ作業はフランス環境エネルギー管理庁(ADEME)が担い、EV約500車種とその派生車を調査した。

中国の自動車産業は石炭火力発電に大きく依存しており、今後は多くの中国製EVが対象外となる見通しだ。既に、ルノーの低価格ブランド「ダチア」は、中国から輸入しているEV「スプリング」がリストから外れた。テスラの「モデル3」は中国で製造されており、補助金対象にならない可能性がある。

フランス政府はEV普及策として既に年間総額10億ユーロ(11億ドル)の枠を設け、購入者に5000―7000ユーロを補助しており、今回はその改定となる。

財務省幹部によると、安価な欧州製EVがないため、従来の制度では補助金支給額の3分の1が中国製購入者に充てられていた。こうした傾向は、外国メーカー車の輸入急増と国内メーカーとの競争力格差の拡大に拍車をかけている。

ロイター
Copyright (C) 2023 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

プーチン氏、米停戦案に条件 原則支持も「紛争の根本

ワールド

商品券配布、法的な問題ない=石破首相

ワールド

EU産ワインに200%関税も、トランプ氏が対抗措置

ビジネス

バイナンス、トランプ一族の資本参加に向けて協議=W
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33
特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33
2025年3月18日号(3/11発売)

3Dマッピング、レーダー探査......新しい技術が人類の深部を見せてくれる時代が来た

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦している市場」とは
  • 2
    【クイズ】世界で1番「石油」の消費量が多い国はどこ?
  • 3
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は中国、2位はメキシコ、意外な3位は?
  • 4
    白米のほうが玄米よりも健康的だった...「毒素」と「…
  • 5
    SF映画みたいだけど「大迷惑」...スペースXの宇宙船…
  • 6
    【クイズ】ウランよりも安全...次世代原子炉に期待の…
  • 7
    「若者は使えない」「社会人はムリ」...アメリカでZ…
  • 8
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手…
  • 9
    「紀元60年頃の夫婦の暮らし」すらありありと...最新…
  • 10
    「トランプの資産も安全ではない」トランプが所有す…
  • 1
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 2
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦している市場」とは
  • 3
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は中国、2位はメキシコ、意外な3位は?
  • 4
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題…
  • 5
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手…
  • 6
    白米のほうが玄米よりも健康的だった...「毒素」と「…
  • 7
    「これがロシア人への復讐だ...」ウクライナ軍がHIMA…
  • 8
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 9
    【クイズ】ウランよりも安全...次世代原子炉に期待の…
  • 10
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 6
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
  • 9
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 10
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中