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2025年02月28日(金)18時37分

 昨秋から5カ月続いた膠着相場が一気に下抜けた。トランプ米大統領の政策を巡る楽観は警戒に転じ、世界的な株高をもたらした米半導体大手エヌビディアへの過度な期待は修正された。写真は25日、ニューヨーク証券取引所で撮影(2025年 ロイター/Brendan McDermid)

Noriyuki Hirata Hiroko Hamada

[東京 28日 ロイター] - 昨秋から5カ月続いた膠着相場が一気に下抜けた。トランプ米大統領の政策を巡る楽観は警戒に転じ、世界的な株高をもたらした米半導体大手エヌビディアへの過度な期待は修正された。積極的な買い材料が見当たらない中、テクニカル的な節目を下回った日本株は、トレンドフォロー型のヘッジファンドなどに狙われやすく、一段の下げリスクを警戒する声もある。

トランプ氏はビジネスマンであり、なにより株安を嫌っているだろうーーこうした市場の勝手な思い込みが裏切られつつある。ここにきて関税を巡る発言が毎日のように発せられ、「(市場は)楽観視しすぎた」(インベスコ・アセット・マネジメントの木下智夫グローバル・マーケット・ストラテジスト)との声が聞かれる。

トランプ大統領は27日、メキシコとカナダに対する25%の関税措置を予定通り3月4日に発動させると表明。前日には、発動が延期になるのではないかとの観測が浮上していた。中国に対しても10%の追加関税にさらに10%を上乗せする措置を3月4日に実施するとも表明した。

インベスコの木下氏は、中長期的には、ディールの一環だったと整理されるかもしれないとみているが「短期的には、高関税の発動に向けて警戒感が強まりかねない」と慎重姿勢を崩さない。

加えて、この日はエヌビディア株の急落が直撃した。注目された決算そのものは好調だったものの、想定を大きく超えるような内容ではないと解釈された。逆に、中国AI(人工知能)ディープシークの台頭以降、AIのコモディティ化が警戒されている中で、懸念がクローズアップされた。

米マイクロソフトなどによるデータセンター投資の縮小も指摘されていた中で「業績のピークアウト感を強めた」と松井証券の窪田朋一郎シニアマーケットアナリストは解説する。

これまで半導体関連株は相場を主導する「柱」となっていたが、足元では状況が変化しつつある。丸三証券の投資情報部長・丸田知宏氏は「半導体関連の物色のフェーズは一巡したようだ」と述べ、半導体株の調整が長引く可能性もあるとみている。

<需給面でも不安材料>

裁定買い残の動向も要注意だ。2月21日までのプログラム売買状況によると、金額ベースの裁定買い残(当限・翌限以降の合計)は、前週比1573億円減少しながら1兆9184億円で、引き続き高い水準にある。

みずほ証券の三浦豊エクイティ調査部シニアテクニカルアナリストは「先物が売られると下げが加速しやすいので注意が必要」という。

東証データによると、21日までの週に、信用買い残が4週連続増加して4兆5372億円と、昨夏の急落局面の8月2日以来、約6カ月ぶりの高水準になっていた。信用取引による株購入のうち資金返済が完了していない分の残高であり、潜在的な売り需要を映す。株価が持ち直す局面では、ヤレヤレ売りとして上値を抑制する要因になりやすい。

テクニカル面からは、昨年8月の暴落の際に下支えになった24カ月移動平均線(3万5760円付近)まで、下値めどは見当たらない。SMBC信託銀行の山口真弘投資調査部長は「米国の関税強化の動きが一段と進んだり、為替が急激に円高に振れたりするなど悪材料が出た場合は、日経平均が3万5000円程度まで下がる可能性もある」とみている。

日本株に影響を与えやすい米国株は、ディフェンシブ株が持ちこたえているがどれだけ耐え続けられるかは危ういと松井の窪田氏は話す。「高金利の影響でAI関連以外は傷んでおり、AIが崩れると相場の柱を失う可能性がある」といい、一段安のリスクに身構えている。

(平田紀之、浜田寛子 編集:橋本浩)

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